出題基準:
- 虐待防止と早期発見
- 虐待を受けた児と家族の健康課題
- 地域における継続した支援
- 要保護児童対策協議会
【 文 献 】
- 医療情報科学研究所 編:「保健師国家試験のためのレビューブック 2023 第23版」、メディックメディア、2022
- 荒井 直子 他 編:「公衆衛生看護学.jp 第5版 データ更新版」、インターメディカル、2022
- 医療情報研究所 編:「公衆衛生がみえる 2022-2023」、メディックメディア、2022
- 『標準保健師講座』編集室:「2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集」、医学書院、2022
- 医療情報科学研究所:「クエスチョン・バンク 保健師国家試験問題解説 2023 第15版」メディックメディア、2022
*今回は文献(1)(2)(3)を参照しながら、ノート作成しています*
虐待防止における保健師の役割と支援
児童虐待:2020(令和2)年度の相談対応件数は 205,044件
- 身体的虐待
児童の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること
(タバコの火の押し付け、冬の戸外への締め出し等) - 保護の怠慢・拒否(ネグレクト)
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、長時間の放置、保護者以外の同居人による同様の行為の放置、その他の保護者として監護を著しく怠ること
(おむつ交換せずに放置、病気でも受診させない等) - 心理的虐待:相談件数の約6割を占める
児童に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力、その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
(言葉による脅し、無視、他のきょうだいとの差別的な扱い) - 性的虐待
児童にわいせつな行為をすること、またはわいせつな行為をさせること
(性的関係の強要、お風呂に無理やり一緒に入る等)
虐待を発見するためのサイン
皮下出血、火傷、眼底出血、鼓膜破裂、頭部外傷、骨折、表情の欠如、不衛生な身体・衣服、親に対する敏感な態度、発育障害・・・
- 揺さぶられっ子症候群
生後6ヶ月以内の子を過度に揺することで頭蓋内出血や眼底出血、運動障害や発達障害を起こす。 - 代理によるミュンヒハウゼン症候群
周囲の関心を集めるために子の病気や怪我を捏造する行為が認められる。 - 愛情遮断症候群
親の愛情が欠如していたり、家庭崩壊など精神的圧迫が加えられた時に成長障害が起こる(嘔吐・下痢・異常行動等もみられる)
児童虐待防止法:「児童虐待の防止等に関する法律」平成12(2000)年制定
児童虐待防止に関する施策を促進し、児童の権利・利益を擁護する。
- 第2条 児童虐待の定義
身体的虐待、保護の怠慢・拒否(ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待 - 第5条 児童虐待の早期発見
児童の福祉に業務上・職務上関係する者は、児童虐待を発見しやすい立場であることを自覚し、早期発見に努めなければならない。
*学校教職員、医師、保健師、看護師、弁護士、警察官、婦人相談員・・・は早期発見に努めるとともに、知り得た秘密を漏らしてはいけない(守秘義務) - 第6条 児童虐待に係る通告
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに市町村、福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならない。「児童福祉法 第5条」と同義。
*この場合は守秘義務違反や「個人情報保護法」の違反にはあたらず、保護者の同意を得る必要はない。
児童虐待防止法 第14条1項(平成28年、令和元年改正):
児童の親権を行う者は児童のしつけに際して、体罰を加えることその他監護および教育に必要な範囲を超える行為により、児童を懲戒してはならず、児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。
虐待に至るリスク
虐待者の構成割合:実母(47.7%)、実父(41.2%)で実父の割合が年々増加してきている。
- 保護者側のリスク要因
望まない妊娠、若年妊娠、子の長期入院等による愛着形成不全、マタニティブルーや産後うつ病、精神・知的障害、慢性疾患、アルコールや薬物の依存、子育て上の不安・ストレス、被虐待経験等 - 子ども側のリスク要因
乳児期の子ども、未熟児、障害児、多胎児、育てにくさをもつ子ども等 - 養育環境のリスク要因
経済的不安定、孤立した家庭、ひとり親家庭、子連れの再婚家庭、夫婦不和、DV家庭等 - その他ハイリスクな状況
妊娠届出の遅延、妊婦・乳幼児健康診査未受診、飛び込み出産、きょうだいへの虐待歴等
特定妊婦とは
若年、未婚やひとり親、望まない妊娠、経済的困窮、心身の問題、母子健康手帳未交付、妊娠届の妊娠後期の提出や未提出、妊婦健康診査未受診や受診回数が少ない、要保護児童・要支援児童を養育している等
- 要支援児童とは乳児家庭全戸訪問等で把握した、保護者の養育を支援することが特に必要と認められた児童を指す。
- 要保護児童とは、保護者のない児童、保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を指す(非行児童なども含まれる)
要保護児童対策地域協議会:子どもを守る地域ネットワーク
児童福祉法に基づき、虐待を受けた児童の早期発見や適切な保護を図るため、関係機関が情報交換を行うとともに、支援の内容に関する協議を行う。
要保護児童対策地域協議会は必要に応じて、関係機関に対して資料や情報提供を求めることができる。関係機関もこの求めに応じるよう努めなければならない(児童福祉法 第25条)
居住実態が把握できない児童については、要保護児童対策地域協議会を活用し、関係機関で情報を共有する。
- 代表者会議
年1〜2回程度の開催。各関係機関の責任者レベルで連携を深める。 - 実務者会議
3ヶ月に1回程度の開催。すべてのケースの定期的な状況確認を行う。
主担当機関の確認、支援方針の見直し等を行う。 - 個別ケース検討会議
適宜開催され、個別のケースに直接かかわっている者や今後かかわる可能性がある関係機関の担当者が出席する。
危険度や緊急度の判断や支援内容の検討を行う。
DV法:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(2001年制定)
- 暴力に関する通報や相談、保護、自立支援などの体制を整備する。
- 婦人相談所等に設置される配偶者暴力相談支援センターが窓口。
- 暴力を発見した者は、配偶者暴力相談支援センターまたは警察官に通報するよう努めなければならない。
- 生命や身体に重大な危害を受けるおそれがある場合は、地方裁判所が配偶者からの暴力に対する保護命令を出すことができる(10、11条)
- DV被害については安全が最優先される。質問をするときは回答しやすいよう「はい」「いいえ」で答えられるように配慮する。
- DVが起きている家庭では、子どもの心理的虐待が懸念されるため、子どもの心身の状態にも十分なアセスメントをしなければならない。
支援中の家庭が転居する場合は、転居前後の市町村の間で情報共有を行い、支援の継続を図る(この情報共有は守秘義務違反にはならない)
【hokenCから一言】
今回の内容は出題基準からすると、たった数個の項目に集約されます。しかし保健師のお仕事の中でも最も困難で緊張感を要する支援内容といってよいと思います。現場では常に張り詰めた空気が漂っています。出勤直後の電話は少し震えながら対応することもあるでしょう。
さまざまな知識が必要な領域ですが、勉強ばかりしていても対応できません。
実務経験とともに人間性が問われる場面にさらされることも多いと思います。
テレビを見ているとニュースでネグレクトの死亡事例が連日のように報道されています。
児童虐待やDVケースの支援は時に「児童相談所の保護が遅すぎる!!」など、さまざまな批判にさらされる活動領域でもあります。国試にも状況設定問題等で保健師の対応方針が問われることがあります。日常的な出来事に対する倫理観やバランス感覚が問われているようにも思います。
地域保健の活動内容はコロナ禍でさらに多様性や深刻さが増してきているのではないでしょうか。やはり勉強は続けないといけないなと痛感しました。
今回で母子保健の領域は一旦終了します。次回からは成人保健についてノートを作成していく予定です。
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