
今回は「成人保健活動・生活習慣病対策」について過去問チャレンジしました。特定健診後のフォローについては数値を覚えるのが少し大変でした。事例が出てくる問題は、細かなところを見てないと間違えそう・・・



成人保健の領域は、国の法律改正や政策の変更などもありますので、私たち現場の保健師は常に国の動向を把握しながら、勤務する地域のデータの変遷に注視し活動しています。
2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集 P186-200
過去問題・予想問題
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD) ⇨ タバコを主とする有害物質を長期に吸入曝露
- 健康日本21(第二次)⇨ 喫煙・過重労働・メタボリックシンドローム・飲酒・糖尿病など
- 大腸がん検診の受診勧奨 ⇨ 受診率が全国平均より低いため未受診理由を調査
- 成人各期の健康課題 ⇨ 青年期・壮年期・更年期・中年期の特徴
- 糖尿病予防事業 ⇨ 60歳代の男性、退職後数年でHbA1cが基準値を超える者が多い
- 一次予防 ⇨ 生活習慣病の一次予防とは
- 特定健康診査・特定保健指導 ⇨ 医療保険者、対象年齢、服薬治療中の者、動機付け支援・積極的支援対象者
状況設定問題
- 生活習慣病の重症化予防 ⇨ 人口5万人、高齢化率34%、農業と農産加工業が主の市、特定健康診査後の取り組み
- 悪性新生物予防 ⇨ 人口約2万人、生産年齢人口が65%、死因の第1位が悪性新生物、一次予防、がん検診、がん対策基本法について
- 特定保健指導 ⇨ 44歳、女性、BMI29.6、腹囲93cm、行動変容ステージが無関心期、情報収集の優先度、初回面接、6ヶ月後の最終評価面接
- 健康診断と保健指導 ⇨ 45歳、女性、会社員、夫と2人暮らし、LDLコレステロール139mg /dl、指導内容、保健師の対応
*保健師国家試験対策ノート(8月6日・7日 分)を復習*


成人保健の理念:日本国憲法 健康権(25条)・基本的人権(11条)・幸福追求権(13条)
成人期はこれまでの人生で獲得したことを基盤に自己実現に向けた活動時期
(就労、結婚、妊娠、出産、育児、子どもの自立、離職・・・)
成人保健の目的は、住民一人ひとりがヘルスプロモーションの観点に立って、高齢社会へ向けて自ら健康管理ができ、社会人としての役割が果たせるよう健康面から働きかけることである。
健康寿命を延伸し住民が健康的で心豊かに生活できる社会を構築するため、早期から生活習慣改善の「一次予防」に重点を置いた施策が重要である。
成人保健の関連施策の変遷
国民健康づくり対策の変遷
- 第一次 国民健康づくり対策:第一次(昭和53〜63年度)
健康診査の充実、市町村保健センターなどの設置、保健師などのマンパワー確保 - アクティブ80ヘルスプラン:第二次(昭和63年度〜平成11年度)
生活習慣の改善による疾病予防・健康増進(運動指針策定、健康増進施設の普及等) - 健康日本21(第一次):第三次(平成12〜24年度)
一次予防重視、健康寿命の延伸、QOLの向上、健康づくり支援のための環境整備、多様な実施主体間の連携、具体的な目標設定と評価、エビデンスに基づいた施策の展開等 - 健康日本21(第二次):第四次(平成25年度〜)
健康寿命の延伸と健康格差の縮小、生活習慣病の発症予防・重症化予防、社会生活を営むために必要な機能の維持・向上、健康を支え守るための社会環境の整備等
2019(令和元)年には健康寿命の目標と、達成するために定めた施策「健康寿命延伸プラン」が策定され、以下の3分野の取り組みを推進している。
- 次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成
- 疾病予防・重症化予防
- 介護予防・フレイル対策・認知症予防
成人保健施策
従来は老人保健法と健康増進法をもとに展開されてきたが、2008(平成20)年4月から「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」に基づき、40歳以上の被保険者に対する特定健康診査と特定保健指導の実施が国民健康保険および被用者保険(職域)の医療保険者に義務付けられている。


健康増進法:2002(平成14)年に制定され翌年5月から施行
健康づくり対策を推進していくための活動
- 基盤整備
- 情報提供の推進
- 生涯を通じた保健事業の一体的推進
2018(平成30)年7月に健康増進法の一部が改正され、学校・病院・児童福祉施設等、行政機関では原則敷地内禁煙となる。
2020(令和2)年4月には全面施行され、多くの施設において屋内は原則禁煙となる。
「健康増進法」は健康診査の実施等に関する指針、健康増進計画の策定、国民健康・栄養調査、健康増進事業、受動喫煙防止、特定保健用食品などについて定められている。
- 健康増進計画:地域の実情に応じた健康づくりの推進のため、都道府県健康増進計画(義務)、市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。
策定にあたっては人口動態統計、医療・介護に関する統計、特定健康診査データ等を活用し策定する。 - 市町村が行う健康増進事業:健康増進法 17条、19条
- 健康手帳
- 健康教育
- 健康相談
- 訪問指導
- 総合的な保健推進事業
- その他の事業(歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、肝炎ウイルス検診、がん検診等)
- 受動喫煙防止:2020年〜 全面施行(健康増進法改正)
国・地方自治体は望ままい受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、意識の啓発、必要な環境整備等の措置を推進するよう努めなければならない。
都道府県知事が、施設の管理権限者に対して指導、命令、勧告を実施したあとも改善が見られない場合、罰則が適応される。
「健康増進法(第25〜42条)」「労働安全衛生法(第68条の2)」「健康日本21(第2次)」「がん対策推進基本計画」において受動喫煙防止に関する規定が定められている。
健康日本21:21世紀における国民健康づくり運動
健康日本21(第二次)の期間は、医療費適正化計画などと期間を一致させるため、平成25(2013)年〜令和5(2023)年度の事業となっている。
5分野53項目の目標数値を設定している。
- 健康寿命の延伸と健康格差の縮小の実現
都道府県格差の縮小 - 生活習慣病の発症予防と重症化の徹底(NCD:非感染性疾患の予防)
高血圧の改善(男性134mmHg、女性129mmHg)
糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数の減少
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の認知度の向上:80%に - 社会生活を営むために必要な機能の維持および向上
自殺者の減少、適正体重の子どもの増加、ロコモティブシンドロームの認知度の増加等 - 健康を支え、守るための社会環境の整備
地域の絆による社会づくり等 - 生活習慣および社会環境の整備
栄養・食生活(適正体重を維持している者の増加、食塩8g /日、野菜350g/日等)
身体活動・運動
休養(週労働時間60時間以上の雇用者の割合の減少)
飲酒(多量飲酒者の減少、未成年者・妊娠中の飲酒をなくす)
喫煙(成人の喫煙率が12%に減少)
歯・口腔の健康
十分改善を認めた項目(第二次中間評価)
- 健康寿命の延伸
- 健康寿命の都道府県格差の縮小
- 血糖コントロール不良者の割合減少
- 自殺者の減少
- 健康格差対策に取り組む自治体の増加
改善が不十分な項目(第二次中間評価)
- メタボリックシンドローム該当者、予備群の減少
- 肥満傾向にある子どもの割合減少
- 介護保険サービス利用者の増加の抑制
- 健康づくりを目的とした活動に主体的にかかわっている国民の割合増加
- 成人の喫煙率の減少


健康寿命
健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義されている。
2016(平成28)年の健康寿命は、男性72.14年、女性74.79年
平均寿命との差は、男性8.84年、女性12.35年
健康寿命延伸プランでは2040(令和22)年までに健康寿命を男女とも75歳以上とすることを目指している。
生活習慣に関する健康課題
生活習慣病は「食習慣、運動習慣、休養、飲酒等の生活習慣がその発症・進行に関与する疾患群」と定義されている。
メタボリックシンドローム
内臓脂肪型肥満を基盤として高血糖、脂質代謝異常、高血圧が集積し、動脈硬化性疾患の発症リスクが高くなった病態をいう。
診断の目的は、動脈硬化のリスクが高い人を早期に見つけ、生活習慣の改善によって内臓脂肪の蓄積を防ぎ、動脈硬化性疾患の予防をすることである。
40〜74歳でメタボリックシンドロームが疑われる者と予備群と考えられる者(男性54.4%、女性16.7%)
特定健康診査・特定保健指導
- 将来の医療費の適正化を図るにあたり、生活習慣病予防が重要と考え、2008(平成20)年4月から特定健康診査・特定保健指導が開始された。
対象者は40〜74歳の医療保険加入者である。 - 記録については作成日の翌年度から5年を経過するまで保存しなければならない。
- 健診結果はマイナポータルを通じて本人が閲覧できる仕組みが構築されている。
基本的な検査項目:既往歴、身体計測、理学的検査、血圧測定、尿検査、血液検査(脂質・肝機能・血糖)
詳細な検査項目:心電図、眼底、貧血、血清クレアチニン等 (医師が必要と判断したものを選択)
保健指導対象者の選定
- (1)腹囲(男性 85cm以上、女性 90cm以上)または
(2)腹囲(男性 85cm未満、女性 90cm未満)かつBMI 25以上 - ① 血糖
空腹時血糖値 100mg /dl以上 または HbA1c(NGSP値)5.6%以上 - ② 脂質
トリグリセリド(中性脂肪)値 150mg /dl以上 または
HDLコレステロール値 40mg /dl未満 - ③ 血圧
収縮期血圧 130mmHg以上 または
拡張期血圧 85mmHg以上 - ④喫煙歴の有無
- ⑤ ①〜③の薬剤治療の有無
〈グループ分け〉
(1)の腹囲に該当し、①〜③が
2つ以上該当または1つ該当+喫煙歴あり:積極的支援
1つ該当+喫煙歴なし:動機づけ支援
0つ:情報提供
(2)の腹囲・BMIに該当し、①〜③が
3つ該当または2つ該当+喫煙歴あり:積極的支援
2つ該当+喫煙歴なし、または1つ該当:動機づけ支援
0つ:情報提供
*保健師は検査結果が、対象者の身体機能と生活習慣との間でどのように関連しているかを説明し、対象者が十分理解し、納得できるよう支援する(行動変容につなげることが重要)
特定健康診査・特定保健指導の評価指標
- ストラクチャー(構造)評価
仕組みや体制を評価(職員、予算、施設、設備、他機関連携、社会資源等) - プロセス(過程)評価
手順や活動状況を評価(情報収集、アセスメント、問題分析、目標、指導手順等) - アウトプット(事業実施量)評価
事業結果を評価(健診受診率、保健指導実施率、継続率等) - アウトカム(結果)評価
対象者の行動、目的・目標の達成度、成果等を評価(肥満度や血液検査等の健診結果、有病者や予備群、死亡率、要介護率等)


高血圧症
狭心症、心筋梗塞、脳卒中、腎不全、眼底出血などの原因
(肥満、ストレス、喫煙、塩分過多、飲酒などのリスクを減らすよう指導)
脂質異常症(高脂血症)
高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド(TG)血症のいずれか
診断基準(空腹時採血)
- LDLコレステロール:140mg /dl以上(120〜139が境界域)
- HDLコレステロール:40mg /dl未満
- トリグリセリド:150mg /dl以上
- Non -HDLコレステロール:170mg /dl以上(150〜169が境界域)
糖尿病
自己免疫や遺伝因子などにより主に小児から思春期に生じる1型糖尿病
生活習慣や遺伝因子により主に中高年に生じる2型糖尿病
糖尿病が進行すると、網膜症、腎症、神経障害などの合併症を引き起こす(患者のQOL低下、社会の医療経済負担が生じる)
健康日本21(第二次)では糖尿病性腎症による年間新規透析導入患者数の減少が目標となっている。
糖尿病性腎症重症化予防プログラム(未受診者・受診中断者等)
慢性腎臓病(CKD):蛋白尿やGFRの低下等が3ヶ月以上持続する状態
重症化により透析療法や腎移植が必要となる
食事療法の基本は食塩摂取制限(病期の進行に合わせてタンパク質やカリウム・リンを制限)
慢性閉塞性肺疾患(COPD):たばこの煙などの有害物質を長期にわたって吸入
咳や痰、体動時の息切れ、高齢になるほど有病率が増加
健康日本21(第二次)では認知度の向上(80%)を目標にしている。
データヘルス計画
平成25(2013)年の日本再興戦略において、すべての健康保険組合に対し、レセプトや健康診査の結果(ICT化したデータ)を活用するデータヘルス計画が策定された。
この計画は、医療保険者が特定健康診査やレセプト情報を分析し、保健事業をPDCAサイクルで効果的・効率的に実施するための計画である(特定健康診査等実施計画と一体的に策定することが大事)
事業者とコラボヘルスによる健康経営も推進されている。


日本におけるがん対策
- がん対策基本法:2006年に成立
2016年の改正では、がん患者の就労支援やがんに関する教育推進が基本的施策に盛り込まれた(①がん予防・早期発見の推進、②がん医療の均てん化の促進等、③研究の推進等、④がん患者の就労等、⑤がんに関する教育の推進)
- がん登録:2013年12月に「がん登録等の推進に関する法律(がん登録推進法)」が制定された。全国がん登録(氏名、性別、生年月日等を含む)は、2016年1月から開始。
患者の同意は不要である。
データは国が一元管理(がん罹患数、罹患率、がん生存率、治療効果等) - がん検診:「健康増進法」に基づく検診
厚生労働省は「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を示している。
胃癌:胃X線検査または胃内視鏡検査(50歳以上、2年に1回)
肺癌:胸部X線検査、喀痰細胞診(40歳以上、年1回)
大腸癌:便潜血検査(40歳以上、年1回)
乳癌:乳房X線検査〈マンモグラフィ〉(40歳以上、2年に1回)
子宮頸癌:視診、子宮頸部の細胞診、内診、必要時コルポスコープ検査(20歳以上、2年に1回)
第3期がん対策推進基本計画:平成29(2017)年〜
がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す。
1 科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実
2 患者本位のがん医療の実現
3 尊厳をもって安心して暮らせる社会の構築
がんの一次予防の中で「望まない受動喫煙のない社会をできるだけ早期に実現すること」を個別目標としている。
目標
がんの予防:成人喫煙率12%、妊婦・未成年者0%
がんの早期発見:検診受診率50%、精密検査受診率90%等


『標準保健師講座』編集室:「2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集」、医学書院、2022、P186-200
医療情報科学研究所:「クエスチョン・バンク 保健師国家試験問題解説 2023 第15版」メディックメディア、2022
一般財団法人 構成労働統計協会「国民衛生の動向・厚生の指標 増刊・第69巻9号 通巻第1081号」、2022
医療情報科学研究所 編:「保健師国家試験のためのレビューブック 2023 第23版」、メディックメディア、2022
医療情報研究所 編:「公衆衛生がみえる 2022-2023」、メディックメディア、2022
荒井 直子 他 編:「公衆衛生看護学.jp 第5版 データ更新版」、インターメディカル、2022
車谷典男・松本泉美 編:「疫学・保健統計ー看護師・保健師・管理栄養士を目指すー」健帛社、2016
コメント