国家試験対策:疫学ノート

hokenC

疫学については前回の学習から1ヶ月以上が経過してしまいました。
今回はちょっと自信がないので、8月16日〜19日、25日に作成した対策ノートを復習してから、過去問題にチャレンジします。

保健師

国家試験では必ず出題される科目です。保健統計と並んで苦手意識がある人もおられると思いますが、理解できれば確実に得点アップできる領域です。諦めずにチャレンジしてください。

hokenC

はい、わかりました。

目次

第1章 疫学の概念

疫学の定義

疫学は、ある特定の集団で観察される健康に関連した状態またはイベント(事象)の分布とそれらの規定因子を研究する学問であり、かつ健康問題を制御するために、研究結果を応用する学問である(国際疫学会編集の疫学辞典 第5版から)

  1. study(研究)
    サーベーランス、観察、仮説の樹立と、その検証、分析的研究、そして実験的研究がある。
  2. distribution(分布)
    時、場所、患者の特性による分析結果を指す。
  3. determinants(規定因子)
    健康に影響を与える、すべての物理的、生物学的、社会的、文化的、そして行動科学的な因子。
  4. 健康に関連した状態とevents(事象)
    病気、死因以外に喫煙などの行動、予防方策に対する反応、公共医療サービスの供給と利用。
  5. population(集団)
    特定の集団とは、正確に人数が数えられているなど、同定可能な特性をもった集団。
  6. application(応用)
    健康を増進させ、まもり、回復させるためのもので、疫学の目的を明確にすること。

疫学における調査方法

  1. 因果関係を調べる
  2. 経過を観察する
  3. 特定集団の健康状態を記述する
  4. 介入の結果をみる

曝露・危険因子・防御因子(予防因子)

曝露とは、疾病が発症する前に、ある特定の要因にさらされること
環境要因(生活習慣、家族構成、教育、居住地域、労働環境、環境汚染等)
宿主要因(性別、年齢、性格、体質、既往歴等)

  • 危険因子とは
    「それに曝露した集団は非曝露の集団に比べて罹患や死亡の確率が上昇するような因子」
  • 防御因子(予防因子)とは
    「罹患したりそれらで死亡したりする確率を、そうでない集団に比べて低下させる因子」
  • 危険因子、防御因子(予防因子)というとき、必ずしも直接原因を指していない。
    間接原因の場合もある。
    例:飲用水に利用されていた共同井戸は実はコレラ菌で汚染されていた(ジョン・スノウ)

診断基準:均一性の確保と比較性の担保が目的

診断の妥当性を考えるとき注意すべきことは、見逃さず(偽陰性)、拾い過ぎず(偽陽性)、対象疾病をどの程度確実に把握できているかを知っておくこと。
スクリーニング理論をもとに検査項目の診断能力を見極めておかなければならない。

因果関係の判断条件

ある要因が作用して、それが原因で、ある結果を発生した場合、要因すなわち原因と結果の間に因果関係がある。

  1. 関連の一致性:同じ結果が反復して普遍的に得られること
  2. 関連の強固性:相対危険度(リスク比)やオッズ比等があること
  3. 関連の特異性:ひとつひとつの曝露と結果に特異な関連性があること
  4. 関連の時間性:必須の条件
  5. 関連の整合性:事実と矛盾がないこと

コッホの3原則とは

  1. その微生物が発見されるのは常に同じ疾病であること
  2. その微生物は他の疾患で見いだされないこと
  3. 患者から分離され培養された微生物は感受性動物への接種で同一の疾病を起こしうること

必要条件と十分条件

必要条件とは必ず特定の要因に曝露しているという意味で、十分条件とは、特定の要因に曝露すると必ず疾病が起こるという意味。ほとんどの場合は十分条件を成立させることは難しい。

ヘルシンキ宣言:1964年の世界医師会総会で宣言
「人間を対象とする医学研究の倫理的原則」

第二次世界大戦中のナチスによる人体実験を弾劾したニュールンベルグ裁判の判決が背景にある。

インフォームドコンセント(IC)を明確にした宣言

人を対象とする医学系研究を対象とする倫理指針

2014(平成26)年12月の大幅改定で 文部科学省と厚生労働省が合同で通達

  1. 社会的および学術的な意義を有する研究の実施
  2. 研究分野の特性に応じた科学的合理性の確保
  3. 研究対象者への負担ならびに予測されるリスクおよび利益の総合的評価
  4. 独立かつ公正な立場に立った倫理審査委員会による審査
  5. 事前の充分な説明および研究対象者の自由意思による同意
  6. 社会的に弱い立場にある者への特別な配慮
  7. 個人情報等の保護
  8. 研究の質および透明性の確保    (以上が指針の基本方針)

インフォームドコンセント(IC)では、文書、口頭と記録作成を定めている。
ICとは別にインフォームドアセントの所得を定めた項がある。
「小児や認知機能の低下等でICを与える能力を欠く対象者が、その理解力に応じたわかりやすい言葉で研究内容について説明を受けて、研究の参加や継続について賛意を表明すること」
アセントの取得はおおむね7歳以上、文書アセントはおおむね中学生以上。

第2章 疾病頻度の指標

有病割合

測定したい任意のある一時点における、ある集団内で注目している疾病を保有している人の割合

有病割合(P)=集団内での注目する疾病保有者の人数(D)/ある一時点における対象集団の人数(N)=D/N

横断研究実施時点という形、医療ニーズの大きさの指標として重要

*有病率=ある一時点における有病者数/ある一時点における観察集団の人数

罹患率

罹患率(I)=調査期間中の新規罹患数(D)/調査期間中のリスク保有者の人年の合計(PY)=D/PY

それぞれの人年を計算し、合計したものが分母(P Y)
罹患率には時間の単位が必須、それがなければ意味をなさない

*罹患率=一定期間内に新たに発生した患者数/危険曝露人口一人ひとりの観察期間(健康な状態でいる期間)の総和(人年)

死亡率

死亡率(I)=調査期間中の死亡数(D)/調査期間中のリスク保有者の人年の合計(PY)=D/PY

*死亡率=一定期間内での死亡者数/観察集団の人数

リスク

個人を想定している場合には注目している事象がその個人に発生する確率

累積罹患率

累積罹患率(CI)=一定期間内の発生人数(D)/調査開始時における対象集団の人数(N)=D/N

値の範囲は0以上1以下
閉じられた集団(閉鎖コホート)であること、競合リスクがないことが前提

*累積罹患率=一定期間内に新たに発生した患者数/観察開始時点での危険曝露人口の人数

致命率

致命率(F)=一定期間中に死亡した罹患者数(M)/ある疾病に罹患した人数(D)=M/D

*致命率=一定期間内でのある疾病による死亡者数/一定期間内でのある疾病の罹患者数

有病割合と罹患率の関係

有病割合(P)は、罹患率(I)✖️ 平均有病期間(L)にほぼ等しい
糖尿病などの生活習慣病の場合のように致命率が低い疾患では、有病期間は長くなるので、有病割合は高くなる。

罹患率と累積罹患率の関係

累積罹患率と罹患率(死亡率)の関係では、累積罹患率が0.2程度までで、罹患率が調査期間を通じて一定であると仮定した場合、累積罹患率と罹患率との間に、以下の式が成立する。

累積罹患率(CI)=罹患率または死亡率(I)✖️ 観察期間(T)

第3章 曝露効果の指標

相対危険

リスクや罹患率の比を用いて仮説因子への曝露効果を表現する疫学指標
1より大きい場合は曝露した仮説因子が疾病発生の危険因子であることを、1より小さい場合は防御因子であることを意味する。

累積罹患率比

累積罹患率比(CIR)=曝露群の累積罹患率/非曝露群の累積罹患率

罹患率比

罹患率比(IRR)=曝露群の罹患率/非曝露群の罹患率

オッズ比

オッズとは、ある事象が起こる確率(P)の起こらない確率(1ーP)に対する比をいう
P/(1ーP)のこと

症例対照研究では

  • a ・・曝露あり症例群
  • b・・曝露なし症例群
  • c・・曝露あり対照群
  • d・・曝露なし対照群

オッズ比(OR)=症例群のオッズ(a/ b)/ 対照群のオッズ(c /d)

ハザード比(HR)

コホート研究や無作為化比較試験などでは、疾病や罹患や死亡といった事象発生までの経過時間にも注目して、仮説因子の結果への効果を分析すること。

例えば2つの群の生命曲線の違いを示す場合、違いをもたらす仮説因子の効果はコックスの比例ハザードモデルで得られるハザード比で評価する。

寄与危険と寄与危険割合

寄与危険とは、曝露群と非曝露群のリスクや罹患率(死亡率)の差である。

寄与危険割合とは、寄与危険が曝露群のリスクや罹患率に占める割合である。

曝露群の罹患率・・a/  年
非曝露群の罹患率・・b/年 とすると

寄与危険=(aーb)/ 年
寄与危険割合=(aーb)/ a=1ーb/ a=1−1/RR=(RRー1)/RR
RR(相対危険)=a /b

人口寄与危険

曝露者と非曝露者がさまざまな割合で構成される一般人口のリスクや死亡率と、人口全員が非曝露者であったと仮定した場合のリスクや死亡率との差を求めることによって、当該曝露集団における曝露に起因するリスクや死亡率の上昇がどの程度かを表す指標である。

人口寄与危険=(人口全体の死亡率)ー(人口全員が非曝露群であった場合)

人口寄与危険割合

人口全体のリスクや死亡率のうち人口寄与危険が占める割合

人口寄与危険割合=人口寄与危険/ 人口全体の死亡率

第4章 疫学調査法

母集団と標本

母集団とは、集団の特性について推量するための大きな集団
標本(サンプル)とは、母集団から選ばれた一部の人や物

母集団すべてを調査する方法=悉皆調査(全数調査)*国勢調査等
母集団の中から標本を抽出して調査する方法=標本調査 *国民生活基礎調査や国民健康・栄養調査等

標本抽出方法

  • 単純無作為抽出法:乱数表等を使用してランダムに抽出
  • 系統抽出法:最初の標本を無作為に抽出し、あとは一定の間隔で抽出
  • 層化無作為抽出法:構成員の属性によって、いくつかの層に分け、それぞれ一定の率で抽出
  • 多段抽出法:繰り返し無作為抽出を行い、最終的に個人を標本として抽出
  • クラスター抽出法:繰り返し無作為抽出を行い、最終的に特定の集団(クラスター)を標本として抽出

疫学研究のデザイン:観察研究と介入研究に大別

〈観察研究〉

記述疫学:疾病の頻度や分布を記述し、仮説を設定

  • 横断研究(断面研究)・・・一時点における曝露と発症の関連を調べる
  • 生態学的研究(地域相関研究)・・・集団間で曝露と疾病頻度を比較する

分析疫学:記述疫学等でたてられた仮説を検証

  • コホート研究・・集団の曝露群と非曝露群に分けて長期にわたり追跡し比較する
  • 症例対照研究・・症例群(患者群)と対照群(非患者群)を設定し、過去にさかのぼって比較する

〈介入研究〉

臨床試験:介入を行うことで治療の効果等を評価

ランダム化比較試験(RCT)・・介入群と対照群にランダムに分けて比較する

地域介入研究:地域住民を対象に介入の効果を評価

疫学研究の3段階

  • 第1段階 記述疫学「現状の記述」
  • 第2段階 分析疫学「仮説の検証」
  • 第3段階 実験疫学「因果関係の決定(検証)」

横断研究:一時点における曝露と疾病発症との関連について調査

関連の時間性を把握することを目的としておらず、因果関係まではわからない

生態学的研究:大きな集団を単位として、異なる集団間の比較・観察を行う

2つの変数の相関関係を探索する方法(疾病の危険因子等を模索)

コホート研究:曝露群と非曝露群に分け、将来に向かって追跡比較する方法

  • 前向き研究
  • 罹患率の高い疾病に適している
  • 原因不明の発症要因研究に適している(複数の疾病の研究ができる)
  • 相対危険度(リスク比)、寄与危険度(リスク差)を計算できる
  • 信頼性・妥当性が高い
  • 長時間の観察が必要で、費用・労力が大きい

症例対照研究:過去の曝露状況を比較する方法

  • 後ろ向き研究
  • 発症頻度の低い疾病に適している
  • リスク比の近似値としてオッズ比を用いることができる
  • 信頼性・妥当性は低い
  • 結果が出るまでの時間が短いため、費用・労力が小さい

介入研究:介入群と非介入群を比較して影響を研究する

介入と結果の時間的関係が明確であるが、発生頻度の低い疾病の研究には不向き

ランダム化比較試験(RCT)

介入研究の中でもエビデンスレベルが高い研究デザインである

システマティックレビュー

同じテーマの研究論文のデータを網羅的に収集し、一定の基準で選択・評価を行い、複数のエビデンスを統合する方法

個々のエビデンスごとに、妥当性や適用性を検証し統合することで、バイアスや偶然による影響を排除し、より信頼性の高い結果を導くことができる

メタアナリシス

同じテーマのランダム化比較試験(RCT)を収集し、それらを統合して統計学的に分析する方法
(エビデンスが最も高い研究デザイン)

偶然誤差と系統誤差

〈系統誤差の例〉

  • 自己選択バイアス:研究に参加するかどうかに偏りが生じること
  • 思い出しバイアス:過去のことを思い出す正確さに偏りが生じること
  • 調査者バイアス:調査者の情報の聞き取り方に偏りが生じること
  • 診断バイアス:曝露の有無が診断に影響を与えること

偶然誤差の大きさを表す指標として、分散と標準偏差がある

信頼性と妥当性

  • 信頼性とは「繰り返し検査を行っても同じ結果が得られるか」という結果の再現性・反復性を示す
  • 妥当性とは「測定したいものを正確に測定できているか」を指し、敏感度・特異度が重要となる

    偶然誤差が小さいほど信頼性が高くなり、系統誤差が小さいほど妥当性が高くなる

交絡とその制御法

交絡因子とは「曝露因子と疾病の双方に関係があるため、両者に見かけ上の因果関係をもたらす要因のこと」
妥当性を高めるために、ランダム化、限定、マッチング、層化、標準化等を行う

ランダム化とは偏りを避けるために、介入群と非介入群に無作為に割り付けることで、確率的に均等に割り振ること
(交絡因子の制御ができる)

盲検法(ブラインド、マスキング)

参加者の誰が介入(曝露)群で、誰が非介入(非曝露)群かを参加者がわからないように割り付けて、バイアスを取り除くこと
特に研究実施者にも参加者にもどちらの群に属しているかわからなくすることを二重盲検という

限定(制限)

研究対象者をある特定の特徴を有した集団に限定すること

マッチング

性別や年齢、居住地域などを症例と一致させることをいう(少数の場合に用いることが多い)

層化(層別化)

交絡因子となり得る因子について、男女別、年齢階層別など、母集団をいくつかの均質な集団に分けて解析を行う方法
調査後の解析段階における制御法の一つ

標準化

2つ以上の集団で観察されるイベントの発生頻度を比較する場合に、基準集団を定め、主な交絡因子の影響を排除した指標を計算する方法
調査後の解析段階で用いられる

年齢調整死亡率:年齢という交絡因子の影響を排除し、年齢構成の異なる集団間の死亡率を比較する際に用いられる

直接法

観察集団の年齢調整死亡率を用いて計算するため、都道府県等の年齢階級別死亡率がわかる大規模な集団で適応される

年齢調整死亡率(直接法)=(観察集団の年齢階級死亡率✖️基準集団の年齢階級別人口)の各年齢階級の合計/基準集団の人口の総和 ✖️100,000

間接法

標準化死亡比(SMR)を用いる
市町村等の年齢階級別死亡率がわからない小規模な集団に用いられる

年齢調整死亡率(間接法)=基準集団の死亡率✖️(SMR÷100)✖️100,000

標準化死亡比(SMR):観察集団が基準集団と同じ死亡率であると仮定した時に、観察されるであろう死亡数(期待死亡数)と、観察集団の実際の死亡数との比

SMR=観察集団の死亡数/(基準集団の年齢階級別死亡率×観察集団の年齢階級別人口)の各年齢階級の合計×100

SMR=100・・・観察集団と基準集団の死亡水準が同じ

SMR>100・・・観察集団の死亡水準が基準集団の死亡水準より高い

SMR<100・・・観察集団の死亡水準が基準集団の死亡水準より低い

第5章 スクリーニング

スクリーニングの定義

有効性が高く、簡便、迅速な検査を用い、疾病の自覚症状のない集団から疾病の罹患が疑われる者をふるい分けること
(早期発見=二次予防)

スクリーニングの要件

  • 罹患率が高い、または発見・治療が遅れると重篤化する疾病である
  • 疾病の経過が判明していること
  • 最初の徴候が現れてから顕在化するまでの期間がある程度長いこと
  • 陽性者に対して、精密検査で確定診断できること
  • 簡便、低侵襲、信頼性の高い、比較的安価な検査方法である
  • 敏感度・特異度が高い
  • 被検者に負担を与えない
  • 治療法が確立されている

*新生児マススクリーニング、乳幼児健康診査、健康診査、がん検診等*

敏感度/特異度:妥当性を図る指標

敏感度:疾病を有する者のうち、検査で正しく陽性となる割合(高いと除外診断に有効)
特異度:疾病を有さない者のうち、検査で正しく陰性となる割合(高いと確定診断に有効)

カットオフ値

陽性と陰性を分ける判定基準の値
敏感度100%(偽陰性率0%)かつ特異度100%(偽陽性率0%)にすることはできず、トレードオフの関係をとる。

ROC曲線:敏感度と特異度の相関関係

縦軸を敏感度、横軸を偽陽性率(100ー特異度)としてグラフで表したものをいう

陽性反応的中度/陰性反応的中度

陽性反応的中度:検査陽性者のうち、実際に疾病を有する者の割合
陰性反応的中度:検査陰性者のうち、実際に疾病を有さない者の割合

疾病の有病率が上昇するほど、疾病を有する者が多くなり、陽性反応的中度は上昇する。

スクリーニング検査の評価の指標

検査陽性・疾病あり= a(真陽性)

検査陽性・疾病なし= b(偽陽性)

検査陰性・疾病あり= c(偽陰性)

検査陰性・疾病なし= d(真陰性)

  • 敏感度=a➗(a+c)✖️100
  • 偽陰性率=c➗(a+c)✖️100
  • 特異度=d➗(b+d)✖️100
  • 偽陽性率=b➗(b+d)✖️100
  • 陽性反応的中度=a➗(a+b)✖️100
  • 陰性反応的中度=d➗(c+d)✖️100
  • 有病率=(a+c)➗(a+b+c+d)✖️100    (%)

第6章 疾病登録

疾病登録の意義

国や都道府県または医療圏で定められる集団において、集団の特定の疾病が発生した場合、その症例を所轄の公衆衛生機関当局に登録する事業。

一次予防のための研究、地域における保健事業計画、検診事業、地域医療計画策定などを含めて、保健医療や介護の分野で広く多角的に利用されている。

がん登録

地域ごとのがん診療連携拠点病院の整備計画や、専門医師の適正配置、がん検診の有効性を知る手がかりとなり、さらに生存率や治療効果の情報は、医師が治療方針を立てたり、患者が病院を選ぶ際の重要な情報となる。
(罹患数や罹患率、進行度、生存率、治療効果等)

がん対策基本法で、届出義務を課している。

脳卒中登録

地域における脳卒中の発症とその転帰などの実態を把握することにより、予防から医療や介護、そして社会復帰までの一貫した対策に役立てることが目的。

岩手、宮城、秋田、山形、栃木、新潟、富山、京都等で登録事業が行われている。

第7章 主な疾患の疫学

母性関連疾患

  • 不妊症:子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣機能異常、性行為感染症、停留睾丸術後後遺症、睾丸炎、糖尿病やがん治療等による薬剤による精巣機能低下・・・等が要因
  • 流産(妊娠の15%)
  • 死産(12週以降の子宮内胎児死亡):常位胎盤早期剥離、胎児異常、臍帯因子、母親の妊娠高血圧症候群などが要因となる

小児疾患

  • 乳幼児突然死症候群(SIDS):うつぶせ寝、父母の喫煙、添い寝などが関連
  • 悪性新生物:白血病、脳腫瘍、悪性リンパ腫、神経芽細胞腫等が多い
  • 気管支喘息:ハウスダスト、ウイルス性呼吸器疾患、大気汚染、受動喫煙などが指摘されている。
  • アトピー性皮膚炎:3歳児で13%という報告がある。

がん

悪性新生物による死亡数は約37.6万人で、日本人の死因の第1位

死因順位

  • 総数・・・肺、大腸、胃、膵、肝の順
  • 男性・・・肺、胃、大腸、膵、肝の順
  • 女性・・・大腸、肺、膵、胃、乳房の順

年齢調整死亡率(人口10万対)

  • 男性・・・肺(35.3)、大腸(19.7)、胃(18.7)、膵(13.3)、肝(11.4)の順
  • 女性・・・乳房(12.2)、大腸(11.7)、肺(10.4)、膵(9.1)、胃(7.0)の順

悪性新生物の危険因子

  • 喉頭癌(喫煙、飲酒)
  • 食道癌(喫煙、飲酒、肥満等)
  • 胃癌(塩辛い食品、喫煙、ヘリコバクター・ピロリ感染)
  • 大腸癌(遺伝、肥満、飲酒、肉食、喫煙)
  • 肝癌(B型・C型肝炎ウイルスの持続感染、喫煙、アフラトキシン、飲酒等)
  • 膵癌(喫煙、肥満)
  • 肺癌(喫煙、石綿、大気汚染、飲料水中のヒ素)
  • 乳癌(低年齢初経、高年齢初産、高年齢閉経、妊娠・出産経験がない、授乳歴がない、経口避妊薬の使用、飲酒、乳癌の家族歴等)
  • 子宮頸癌(ヒトパピローマウイルス感染、喫煙)
  • 子宮体癌(高年齢閉経、未経産、肥満、エストロゲン補充療法)
  • 膀胱癌(喫煙、芳香族アミン類への曝露)
  • 皮膚癌(紫外線、放射線への曝露、コールタール)
  • 白血病(遺伝子異常、放射線への曝露、抗がん剤投与の既往、ヒトT細胞白血病ウイルス1型感染)
  • 甲状腺癌(放射線への曝露、ヨウ素欠乏または過剰)

心血管疾患

  • 急性心筋梗塞:心疾患死亡の20.3%を占めている(男性の死亡率が女性よりも高い)
  • その他の虚血性心疾患:心疾患死亡の17.7%を占めている

脳血管疾患:血圧管理が重要

危険因子として、年齢、高血圧、喫煙、耐糖能異常、多量飲酒などが知られている。

糖尿病

糖尿病が強く疑われる者は約1,000万人(うち76.9%が現在治療を受けている)
患者は男性の方が多く、受療率は入院では90歳以上、外来では75〜79歳が最も高くなっている。
新規人工透析導入患者の原因疾患の第1位は、糖尿病性腎症である。

難病

最も多いのは潰瘍性大腸炎で15万人を超えている。
次に、パーキンソン病、全身性エリテマトーデスへと続く。

精神疾患

精神障害者数は、約419万3千人で近年急増している。
入院では「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害」
外来では「気分(感情)障害(躁鬱病を含む)」が多い。

精神病床の平均在院日数は265.8日、病床利用率は85.9%で、一般病床と比較し長く高い。
任意入院は52.1%と最も多く、次いで医療保護入院が46.8%、措置入院は0.6%となっている。

自殺者は平成10(1998)年以降毎年3万人を超えていたが、平成24(2012)年からは3万人を下回っている。令和2(2020)年は2万1,081人(男性1万4,055人、女性7,026人)である。
40歳代と50歳代で多くなっている(年齢階級別自殺者数)
原因・動機は健康問題が最も多い。

認知症

かつては脳血管性認知症が多くを占めていたが、現在はアルツハイマー型認知症(約60%)が最も多い。

感染症

結核

平成9(1997)年には新規発生患者数が38年ぶりに増加
平成11年に結核緊急事態宣言を発表し、平成12年以降は減少傾向)
罹患率は、先進諸国の中ではまだ高く、地域差が大きい。
新登録結核患者のうち、70歳以上は61.1%、外国出生の患者は20〜29歳が73.1%を占める。

HIV感染症・エイズ

世界のHIV感染者は3,800万人(アフリカ地域が多い)
国内のHIV感染は、性的接触による感染が全体の87.2%を占める(同性間の接触が72.1%)
日本国籍男性は同性間の性的接触、日本国籍女性は異性間の性的接触による感染が最も多い。(関東甲信越ブロックでの報告が最も多い)

性感染症

梅毒の感染者数は、令和元年は6,642人となり急増(10歳代の増加が著しい)
性器ヘルペスウイルス感染症:9,413人で増加傾向
尖圭コンジローマ:6,263人で増加傾向

疫学の手書きMEMO

No.1 リスク比・リスク差・寄与危険割合

No.2 集団寄与危険割合・オッズ比

No.3 感度・特異度・偽陽性率・偽陰性率

No.4 陽性反応適中度・陰性反応適中度・有病率 等

文献

『標準保健師講座』編集室:「2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集」、医学書院、2022

医療情報科学研究所:「クエスチョン・バンク 保健師国家試験問題解説 2023 第15版」メディックメディア、2022

一般財団法人 構成労働統計協会「国民衛生の動向・厚生の指標 増刊・第69巻9号 通巻第1081号」、2022

医療情報科学研究所 編:「保健師国家試験のためのレビューブック 2023 第23版」、メディックメディア、2022、P250-284

医療情報研究所 編:「公衆衛生がみえる 2022-2023」、メディックメディア、2022、P10-37

荒井 直子 他 編:「公衆衛生看護学.jp  第5版 データ更新版」、インターメディカル、2022

車谷典男・松本泉美 編:「疫学・保健統計ー看護師・保健師・管理栄養士を目指すー」健帛社、2016、P2-130

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