ごまごま保健室だより 第8号「脳の基本的なメカニズムについて」

hokenC

今回は少し硬めの「保健室だより」ですが、脳の機能についてまとめてみました。脳科学が進歩して、脳の部位によって色んな違う役割があるということがわかってきました。興味がある方は読んでみてください。

心理師

さまざまな精神症状や心理学的な知見が脳科学の進歩によって明らかになってきています。心理師にとって脳機能の理解はとても大事になってきました。

目次

脳の構造:大脳新皮質と大脳辺縁系

脳は情報伝達や思考の中枢で、基礎代謝で最も多くのカロリーを消費している器官です。
人間の脳は、古くから存在する大脳辺縁系(動物脳)と、人間らしさを司っている大脳皮質(大脳新皮質)に大きく分けられます。

脳を6つに分けた場合は、大脳半球、間脳、中脳、小脳、橋、延髄に分けられます。

大脳新皮質とは

大脳新皮質は前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉4つの領域に分類されています。

前頭前野、前頭連合野はともに思考の統合、記憶、知的活動、情動、意欲、判断、計画、人格を司っていて、運動性言語中枢であるブローカ野があります。

頭頂葉は脳の頂上にあり、体性感覚機能や空間情報処理の機能を司っています。

後頭葉は脳の後部に位置して、視覚を司って視神経につながっています。

側頭葉は聴覚を司っていて、感覚性言語中枢であるウェルニッケ野が存在しています。

大脳辺縁系とは

大脳辺縁系は、原始的な脳として知られていて、扁桃体や海馬、帯状回といった情動や本能的行動に関連する脳の領域があります。

小脳には姿勢を調整する中枢があって、体のバランスを保つために必要な部位とされています。

間脳、中脳、橋、延髄を合わせた部位は脳幹といい、基本的な生命活動を維持しています。

goma

解剖生理学のテキストを持っている人は、それをみながら読んでほしいな〜

hokenC

部位別にもう少しだけ詳しくまとめてみました。
是非、読んでみてください。

前頭葉:ヒトらしさを担う司令塔

前頭葉は大脳の前部にあって運動関連野や言語野を含んでいます。
「考える」「我慢する」「共感する」「記憶を出し入れする」「集中する」といった高次の機能を担っています。
神経伝達物質のドーパミンは大脳皮質の中では前頭葉に最も多く存在しています。

老化による影響を受けやすいのは、この前頭前野の領域です。
情動のコントロールや意思決定にかかわっています。

頭頂葉:触覚や痛みなどを感じるところ

頭頂葉は後頭部の上部にあります。
感覚情報を集めて複雑な運動を指示したり、数字にもかかわっていて、計算などを行なっているところもあります。

一次体性感覚野では、顔や手足など体全体から送られる触覚や位置感覚、痛みや温度などの感覚情報を受けとって、前頭葉の一次運動野とともに、細かな動きを把握しています。

空間や環境を認知する頭頂葉で、神経細胞が他者との社会的相互関係に応じて、機能を変えることがわかっています。

後頭葉:視覚情報を統合する

後頭葉は頭部の後方に位置します。
目から入った情報を受け取る一次視覚野と、その視覚野から送られてくる情報を整理して、人の顔や物の形、色などを認識する視覚連合野があります。

側頭葉・島葉:言葉や記憶を司る

側頭葉は、頭頂葉との境界にある外側溝の下側、左右の耳の周辺に位置します。
聴覚情報を受け取る一次聴覚野、音声言語の理解にかかわる感覚性言語野(ウェルニッケ野)、聴覚や視覚を統合する側頭連合野などに分けられます。

言葉の理解、物体の色や形の認識など、芸術活動のとても大きくかかわっている領域です。
側頭葉は大脳辺縁系の海馬や扁桃体とも強くアクセスしていて、ヒトの顔の情報や思い出を記憶することにもかかわっています。

島葉(島皮質)では、味覚、嗅覚、触覚、痛覚などの感覚受容に加え、報酬や情動、自己意識などの行動の知覚にも関連していると考えられています。

大脳辺縁系・大脳基底核:本能的な感情や記憶にかかわるところ

大脳辺縁系は、帯状回、扁桃体、海馬、脳弓などから構成され、本能や喜怒哀楽を司るとともに、記憶や自律神経などにも関わっています。

帯状回:行動の動機付け、空間の認知、記憶などにかかわっています。
脳弓:海馬と乳頭体をつなぐ神経繊維の束。
側坐核:快感ややる気にかかわっています。
海馬:日常的かつ短期的な記憶にかかわっています。
扁桃体:快・不快・恐怖や不安など本能的な感情を司っています。

大脳基底核は大脳辺縁系より内側にあって随意運動の調節などにかかわっています。

淡蒼球:線条体から入ってきた情報を視床へ送ります。
視床下核:運動を行う際の微妙な調節、学習記憶などにかかわっています。
黒質:線条体にドーパミンを送り、興奮を抑制します。
線条体(被殻・尾状核):運動系機能を司る被殻と、精神系機能を司る尾状核からなります。

大脳皮質には、活動を促進する回路(直接路)と、活動を抑制する回路(間接路)が二つあります。
この二つのバランスが大事です。

間脳・脳幹:生命活動を維持する中枢

間脳は、視床と視床下部からなります。
視床下部はさらに、松果体、下垂体、乳頭体から成っています。

間脳には意識や情動、運動、嗅覚以外の感覚の中枢である視床があります。
視床下部については、自律神経系を調整する中枢として、摂食、飲水、性、オキシトシンなどの本能的行動や情動、代謝、体温調整等を行っています。

視床:嗅覚以外の感覚情報を受け取って大脳皮質へ送っています。
松果体:概日リズムを調節するホルモン、メラトニンを分泌しています。
視床下部:自律神経系の中枢として機能するほか、怒りや不安などの情動行動にもかかわっています。
下垂体:多くのホルモンを分泌する内分泌器官です。

脳幹は大脳と脊髄のあいだをつなぐ役割を担っていて、生命維持にかかわる機能を統括しています。
脳幹は上から中脳、橋、延髄に分けられます。

中脳:視覚や聴覚の中継点となるほか、眼球運動やバランスをくずしかけた姿勢を正すなど、反射的な行動にかかわっています。
:顔の動きや咀嚼などに関与して、小脳ともつながって運動を調整しています。
延髄:呼吸や循環器系を始めとする自律神経の中枢です。発声、嚥下、唾液分泌、発汗などの神経核もここにあります。

小脳:スムーズな運動を司る

大脳の後ろに位置して、運動の調整、身体の平衡などをコントロールしています。

スポーツや楽器演奏のような緻密な技能を習得することにかかわっています。
最近の研究では、短期記憶や注意力、情動の制御、感情、高度な認識力、計画を立案する能力のほか、統合失調症や自閉症スペクトラム障害といった疾患や障害との関係も明らかになってきました。

左脳と右脳

脳は左右二つに分かれていて、左側を左脳、右側を右脳と呼んでいます。
また、左脳と右脳をつなぐ部位のことを脳梁と呼んでいます。

左脳は、身体の右半分の運動・知覚を支配していて、論理的思考・言語・計算・会話などを司っています。

右脳は、身体の左半分の運動・知覚を支配していて、イメージ・音楽・図形・表情などを司っています。

脳梁は、右脳と左脳の間の情報伝達のために必要な部位ですが、女性が男性よりも約20%大きいといわれていました。
しかし最近の研究(メタ分析)によれば、有意差はないという結果も出ているとのことです。

看護師

脳の機能の理解は、脳卒中や精神科の患者さんの病態を知る上で、参考になる知見だと思います。

文献

落合慈之 監修(2015)「精神神経疾患ビジュアルブック」学研メディカル秀潤社.
大熊輝雄(2015)「現代臨床精神医学 改訂第12版」金原出版株式会社.
篠原菊紀 監修(2019)「マンガでわかる脳と心の科学」池田書店 P168-193.
IPSA心理学大学院予備校(2022)「公認心理師試験対策標準テキスト’22〜’23年版」秀和システム P134-139.

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