2023年 保健師国家試験対策用:対象別公衆衛生看護活動論【高齢者保健活動】のまとめ

目次

高齢者保健の現状:2020年 平均寿命 男性81.64歳、女性87.74歳

1965年は高齢者1人当たり10.8人で支えていたのに対し、2020年は2.1人、2065年には1.3人と予測されている。
1983年:老人医療の無料化により老人医療費が急増
1990年:少子高齢化、介護を要する老人の増加により市町村の福祉計画拡充が必要となる
2000年:社会的入院等の問題が浮上し、介護を要する高齢者への公的サービス整備が必要となる
2008年:国民医療費が33兆円を超え、特に高齢者の医療費が全体の4割を超え、対策が急務となる

65歳以上の高齢者の有訴者率は約4割で、通院者率は約7割
65歳以上の高齢者がいる世帯(2019年)は全世帯の49.4%

  • 単独世帯が28.8%
  • 夫婦のみ世帯が32.3%
  • 夫婦と未婚の子のみの世帯が20.0%
  • 三世代世帯が9.4%

高齢者保健医療福祉の変遷

  1. 老人福祉法の制定(1963年)と老人医療費支給制度
  2. 老人保健法の制定(1982年)と老人保健施設の創設
  3. ゴールドプラン(1989年)と新ゴールドプラン(1994年)
  4. 介護保険制度とゴールドプラン21(2000年):地域包括ケアシステムの推進
  5. 老人保健法から高齢者の医療の確保に関する法律2008年)へ

高齢者医療確保法:平成20(2008)年4月1日〜

「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」
国民の高齢期における適切な医療を確保し給付することで、国民保健の向上および高齢者の福祉の増進を図る。

医療費適正化計画

都道府県は医療費適正化計画を策定する。
第3期の都道府県医療費適正化計画は平成30〜令和5(2018〜2023)年度までの6年間の計画

  • 特定健康診査・特定保健指導の推進
  • 予防接種の普及啓発
  • たばこ対策
  • 生活習慣病の重症化予防
  • 病床機能の分化・連携、地域包括ケアシステムの構築
  • 後発医薬品の使用促進
  • 医薬品の適正使用の推進

健康増進計画、医療計画、介護保険事業支援計画などと調和を図り作成する。

後期高齢者医療計画制度

被保険者は、75歳以上の者(後期高齢者)と65〜74歳の者(前期高齢者)
運営主体は後期高齢者医療広域連合(特別地方公共団体の一種)
保険料は年金からの天引き(特別徴収)が原則
自己負担は原則1割であるが、現役並みの所得者は3割負担である
令和4(2022)年10月〜令和5(2023)年3月までに一定以上の取得者は2割負担が導入される予定
財源は高齢者の保険料、後期高齢者支援金(現役世代の保険料)、公費で構成されている。

介護保険法:2000年に施行 実施主体は市町村および特別区

介護保険の財源は、被保険者(40歳以上の国民)より徴収した保険料が50%、残りの50%が国・都道府県・市町村の公費で賄われている。

  • 第1被保険者:65歳以上の者(約3,500万人)
  • 第2被保険者:40〜64歳の医療保険加入者(約4,200万人)

要介護・要支援状態区分

  • 要支援1(生活機能の一部に若干の低下が認められ、介護予防サービスにより改善が見込まれる)
  • 要支援2(生活機能の一部に低下が認められ、介護予防サービス利用により改善が見込まれる)
  • 要介護1(身の回りの世話に見守りや手助けが必要)
  • 要介護2(身の回りの世話全般に見守りや手助けが必要)
  • 要介護3(身の回りの世話や立ち上がりが一人ではできない)
  • 要介護4(生活機能がかなり低下、全面的な介助が必要な場合が多い。問題行動がみられる)
  • 要介護5(生活機能が著しく低下、全面的な介助が必要。多くの問題行動がみられる)

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準

  • 生活自立(ランクJ):J1は交通機関を利用して外出、J2は隣近所なら外出する
  • 準寝たきり(ランクA):A1は介助により外出、A2は外出頻度が少なく寝たり起きたり
  • 寝たきり(ランクB):B1は車椅子に移乗し食事・排泄を行う、B2は介助により車椅子に移乗する
    (ランクC):C1は自力で寝返りをうつ、C2は自力では寝返りもうたない

要介護認定の流れ

  1. 申請
  2. 訪問調査、主治医意見書
  3. 一次判定(コンピュータによる要介護認定等基準時間の算出)
  4. 二次判定(介護認定審査会による審査判定)
  5. 認定(非該当、要支援1・2、要介護1〜5)

居宅サービス(介護予防サービス)

  • 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導
  • 通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)
  • 短期入所生活介護、短期入所療養介護
  • 特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与・特定福祉用具販売・住宅改修、居宅介護支援

老人福祉法:1963年に制定 介護保険が優先される

老人福祉サービスは、在宅福祉と施設福祉に大別される。
介護保険法の施行によりサービスの多くが介護保険に移行したが、65歳以上でやむなく介護保険を利用できない場合は本法の福祉サービスが提供される。

老人福祉サービスの体系

  • 老人居宅介護等事業(訪問介護)、老人デイサービス事業(通所介護)、小規模多機能型居宅介護事業、複合型サービス福祉事業、老人短期入所事業、認知症対応型老人共同生活援助事業
  • 養護老人ホームと特別養護老人ホームの措置入所、軽費老人ホーム(A型、B型、ケアハウス)、老人福祉センター、老人介護支援センター
  • 高齢者生活福祉センター、老人憩いの家、老人休養ホーム

高齢者保健事業

後期高齢者医療広域連合は、高齢者の特性に応じて健康教育、健康相談、健康診査、保健指導、健康管理、自助努力の支援などの健康の保持増進のために必要な事業(高齢者保健事業)を行うよう努めなければならない。
広域連合は、高齢者保健事業を市町村に委託することができる。

国民健康保険データベース(KDB)を活用し、フレイルの予防などの課題に対応した取り組みを行う。
質問票についてはフレイルなどの健康状態を総合的に把握する目的で実施される。

①健康状態、②心の健康状態、③食習慣、④口腔機能、⑤体重変化、⑥運動・転倒、⑦認知機能、⑧喫煙、⑨社会参加、⑩ソーシャルサポート

地域包括支援センター

介護保険法に定められた高齢者を保健・医療・福祉・介護など様々な面から総合的に支援するための拠点機関。
保健師、主任介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会福祉士の3職種の配置が義務付けられている。

地域包括支援センターの基本機能:日常生活圏域(おおむね30分以内)でサービス提供

  1. 総合相談支援高齢者や家族に対し相談・支援を行う。必要なサービスをつなぐ。
  2. 虐待の早期発見などの権利擁護:悪徳商法被害の予防も含む。
  3. 包括的・継続的ケアマネジメント:多職種・多機関が連携できるネットワークの構築。
  4. 介護予防ケアマネジメント:要支援者、高齢者の介護予防ケアマネジメントを行う。
  5. 地域ケア会議:個別ケースのマネジメントや地域課題共有のための会議を行う。

高齢者の生活と支援

  1. 健康寿命を延伸できるよう、地域の通いの場の拡充やフレイル対策などの介護予防のための支援が行われている。
  2. 閉じこもりは寝たきりや認知症の原因となることもあるため、介護予防教室、高齢者サロン等の社会参加を促すことが重要である。
  3. 独居高齢者の生活を支えるために、地域の見守り体制を構築するとともに、安否確認ができない場合は、家庭訪問を実施し状況確認を行う。
  4. セルフネグレクトや孤独死を予防するために、地域の居場所づくりや地域ぐるみの見守り体制の構築などが重要である。
  5. 疾患を抱える高齢者では、多種類の薬剤の併用により健康障害が生じる場合がある。保健師は医師会や薬剤師会などと連携を図り、対策について検討することが必要である。
  6. 介護が必要になった場合は、本人だけでなく家族の健康状態や介護方法の習得状況についても把握し、支援しなければならない。
  7. 介護負担については、介護時間、ストレスの程度と対処状況、介護に関する困難感が指標となる。
  8. 保健師は、介護技術の習得や情報交換の場として、講習会や介護者の会を開催する。
  9. レスパイト(息抜き)ケアとして、デイサービスやショートステイなどの利用を促し、介護を担う家族に休息の機会の提供を行う。

在宅ケアシステム:保健・医療・福祉が連携し療養者とその家族を支援

ケアチームの構成員(医師、看護師、MSW、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、ホームヘルパー、介護支援専門員、訪問看護師、保健師、民生委員、ボランティア等)

*チームメンバーには療養者家族も含み、療養者とともにチームの中心となる。
*事例に対して不安等がある場合は、事例検討会を開催し対応を検討する。
*サービス担当者会議では、話し合う内容により参加メンバーを選定する。
*住みなれた地域で継続的に生活できるよう市町村が主体となり、在宅医療・介護連携推進事業を実施する。

ケアチームづくりにおける保健師の役割

  • 療養体制の全体調整を行う
  • 本人・家族のニーズを調整する
  • 情報交換の場を設け、ネットワークづくりを行う
  • 地域に必要な事業やシステムの施策化を図る

ターミナルケア:終末期のQOLを高め「その人らしい生」を支援する

在宅におけるターミナルケアの条件

  • 本人・家族が在宅での終末を希望している
  • 家族に介護力があり、かかりつけ医の訪問診療や往診が可能である
  • 緊急時に適切な対応(24時間対応等)ができる

在宅療養支援診療所は、他の病院等とも連携を図りつつ、365日、24時間体制で往診および訪問看護を提供できる診療所である。
*家族などとの死別後の悲嘆の時期には、グリーフケア(家族自ら悲しみを整理する)が必要である*

高齢者の生活と疾病予防

  • 高齢者の健康状態、日常生活状況、住環境、生活史・生き方・信念等、家族との暮らし方、近隣・居住環境との関連と社会資源の利用状況等を把握し、支援へとつなげる。
  • 日常生活支援(食事・生活リズム・家族とのコミュニケーション等)
  • 閉じこもり予防
  • 適切な受診への支援
  • 疾病予防(脳血管疾患の予防、骨折・転倒の予防、認知症の早期発見と予防等)
  • 安全で安心して生活できる地域環境づくり

要支援・要介護高齢者および介護者の現状と支援

保健師は主任ケアマネジャーや社会福祉士と協働して、高齢者の健康問題を発見し、健康教育を行なったり、自助グループへの支援を行なったりする。
また要支援・要介護リスクのある高齢者が予防給付を受けるためのケアプラン作成も行う。

介護者の続柄は配偶者が23.8%と最も多く、次いで子が20.7%、子の配偶者が7.5%となっている。「老老介護」が多く男性が介護者になっている割合は35.0%で、女性の割合の方が多い。

認知症

いったん正常に発達した認知機能が後天的原因により持続的に低下すること
アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉型認知症

  • 中核症状:記憶障害、見当識障害、失語、失行、失認、遂行機能障害等
  • BPSD(行動・心理症状):抑うつ状態、妄想、不安、焦燥、依存、睡眠障害、徘徊、攻撃的行動、異食等

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準

  • ・・・何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立している
  • Ⅱa ・・・家庭外で日常生活に支障が出るような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる(たびたび道に迷う、買い物や金銭管理などでミスが目立つ等)
  • Ⅱb・・・家庭内でも日常生活に支障が出るような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られる(服薬管理できない、一人で留守番ができない等)
  • Ⅲa・・・日中を中心として日常生活に支障が出るような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする(食事や排泄が上手にできない、徘徊、失禁等)
  • Ⅲb・・・夜間を中心として日常生活に支障が出るような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする(食事や排泄が上手にできない、徘徊、失禁等)
  • ・・・日常生活に支障が出るような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする(食事や排泄が上手にできない、徘徊、失禁等)
  • M・・・著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする(せん妄、妄想、自傷・他害等の精神症状や、それに起因する問題行動が継続する状態等)

認知症施策〜共生と予防の両輪で〜

平成24(2012)年:認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)を策定
平成27年(2015)年:認知症施策推進総合戦略〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜(新オレンジプラン)に改正

令和元(2019)年:認知症施策推進大綱が策定
対象期間は団塊世代が75歳以上になる令和7(2025)年まで

認知症施策推進大綱の5つの柱

  1. 普及啓発・本人発信支援(認知症サポーターの養成等)
  2. 予防
  3. 医療・ケア・介護サービス・介護者への支援(認知症地域支援推進員の質の評価・向上)
  4. 認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援
  5. 研究開発・産業促進・国際展開

認知症高齢者に対する支援

  1. つじつまが合わない会話は無理に訂正せず、本人の自尊心を傷つけないように対応する。
  2. 保健師は、本人の意思と家族の考えについて話し合う場を設け、家族間調整を行う。
  3. 保健師は、介護者が認知症についての理解が深められるよう支援する。
  4. 介護者の思いを傾聴し、家庭訪問による状況確認、介護方法、家族会などの情報提供を行う。
  5. 高齢者と家族が孤立しないよう、地域の見守り体制を構築し、ネットワークづくりを行う。
  6. 保健師は、住民理解を深めるため認知症サポーター養成を行う。
  7. 認知症サポーターはステップアップ講座を受けることで、さらに理解を深め、支援活動につなげることができる。
  8. 養成講座の講師役をキャラバン・メイトという(専門的な研修修了者や民生委員などが対象)
  9. 金銭管理が困難な場合は、日常生活自立支援事業や成年後見制度の利用を提案する。
  10. 民生委員は高齢者の見守りを行っていることが多く、必要に応じて情報交換・連携を図る。
  11. 地域包括支援センター等に認知症地域支援推進員(コーディネーターの役割)の配置が進められている。

高齢者虐待〜生命にかかわる健康状態の把握が優先される〜

  • 身体的虐待:身体の外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること
    (令和元年 11,702人 67.1%
  • 心理的虐待:著しい暴言または拒絶的な対応、心理的外傷を与える言動を行うこと
    (6,874人 39.4%
  • 介護等放棄(ネグレクト):著しい減食や長時間の放置、同居人による身体的虐待、心理的虐待または性的虐待の放置等、養護を著しく怠ること
    (3,421人 19.6%
  • 経済的虐待:高齢者の財産を不当に処分、その他不当に財産上の利益を得ること
    (2,997人 17.2%
  • 性的虐待:高齢者にわいせつな行為をすること、させること
    (56人 0.3%)

介護負担が虐待の要因になる場合は、家族の負担状況を把握し、虐待を防止するために必要な支援を講じる。

被虐待高齢者(女性が75.2%、男性が24.8%)
要介護認定を受けている者は68.0%
要介護認定者の中で日常生活自立度Ⅱ以上の者は72.7%
虐待者は被虐待高齢者の息子が40.2%、次いで夫が21.3%、娘が17.8%

高齢者虐待防止法「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」 平成18(2006)年に施行

*国および地方自治体は高齢者虐待防止や高齢者の保護、養護者に対する支援を行うため、関係機関と連携を強化し、必要な体制整備に努めなければならない。

*介護施設、病院、保健所などの職員は、虐待の早期発見に努めなければならない。

*養護者による虐待を発見した者は、高齢者の生命または身体に重大な危険が生じている場合、速やかに市町村へ通報しなければならない。

*市町村は通報や届出を受けた時には、速やかに安全確認、事実確認のための措置を講じ、対応を協議する。
*生命・身体に重大な危険が生じているおそれがある場合は、老人短期入所施設等に短期入所させるなどの福祉の措置を講じる。
*市町村は養護者の負担軽減のため、相談・指導・助言などを行う。

文 献

『標準保健師講座』編集室:「2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集」、医学書院、2022、P202-228.
医療情報科学研究所:「クエスチョン・バンク 保健師国家試験問題解説 2023 第15版」メディックメディア、2022.
一般財団法人 構成労働統計協会「国民衛生の動向・厚生の指標 増刊・第69巻9号 通巻第1081号」、2022.
医療情報科学研究所 編:「保健師国家試験のためのレビューブック 2023 第23版」、メディックメディア、2022.
医療情報研究所 編:「公衆衛生がみえる 2022-2023」、メディックメディア、2022.
荒井 直子 他 編:「公衆衛生看護学.jp  第5版 データ更新版」、インターメディカル、2022.
車谷典男・松本泉美 編:「疫学・保健統計ー看護師・保健師・管理栄養士を目指すー」健帛社、2016.

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