難病保健の制度
- 調査研究の推進
- 医療施設の整備
- 医療費の自己負担の軽減
- 地域における保健医療福祉の充実・連携
- QOLの向上を目指した福祉施策の推進
難病法:平成27(2015)年「難病の患者に対する医療等に関する法律」制定
難病とは、① 発病の機構が明らかでなく、② 治療方法が確立していない、③ 希少な疾病であって、④ 長期の療養を必要とするものをいう(1条)
指定難病は令和3(2021)年11月時点で、338疾患が対象
① 患者数が一定の人数に達していない
② 客観的な診断基準が確立しているという2つの要件を満たす疾患である(人口のおおむね1,000分の1程度に相当)
難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針:厚生労働大臣が定める
医療費助成制度、医療を提供する体制の確保、人材養成、調査・研究、医薬品・医療機器・再生医療等の研究開発、療養生活の環境整備、福祉サービスに関する施策、就労の支援等について方針を定める。
難病対策地域協議会:都道府県、保健所を設置する市および特別区は設置(努力義務)
地域の実情に応じた支援体制の整備について協議する。
関係機関、関係団体、難病患者とその家族、医療・福祉・教育もしくは雇用に関連する職務に従事する者で構成されている。
難病医療費助成制度
医療費助成は都道府県・指定都市が指定医療機関が行う特定医療に対して行われる。
特定医療費の支給に要する費用は都道府県と国が50%ずつ負担している。
療養生活環境整備事業(難病法28条、29条):都道府県・指定都市が実施主体
- 難病相談支援センター事業(相談・支援、地域交流活動の促進、就労支援を行う拠点)
- 難病患者等ホームヘルパー養成研修事業
- 在宅人工呼吸器使用患者支援事業

医療費助成の対象疾患
潰瘍性大腸炎
全身性エリテマトーデス(SLE)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
脊髄小脳変性症・多系統萎縮症
神経変性疾患の患者に対する支援
難病患者に対する支援:保健所保健師の役割
保健所における難病保健活動
- 医療費助成申請(窓口相談)
- 療養・生活の相談支援
電話相談、訪問相談・指導、情報提供、講演会開催、在宅療養支援計画策定・評価、専門医との医療相談機会の設定等 - 地域組織づくり(患者会・家族会支援等)
- 地域ケアシステムづくり
難病対策地域協議会の実施、在宅ケア従事者への研修会、災害時の体制づくり等
- 保健師は難病患者の支援実績を把握し、地域に不足しているサービスや既存資源の有効活用について検討し、システムを構築する。
- 疾病の進行度や機能障害の程度を把握し、今後の状態を予測して、進行に合わせた保健医療福祉サービスを紹介する。
- 生命の危険に対し、異常の早期発見・悪化の予防が求められ、また緊急時の連絡体制も確認しておく必要性がある。
- 患者や家族は疾病の受容への葛藤や今後の進行に対する不安があり、心理的負担が大きい。保健師は心身両面への支援を行う。
- 難病により家族役割の変更や社会生活の変化が生じる可能性がある。保健師は患者だけでなく家族のそれぞれの思いや生活状況を把握し、療養環境・支援体制を整える。
人工呼吸器を装着した療養者への支援
- 在宅療養支援の体制づくりでは、在宅訪問診療を担うかかりつけ医、人工呼吸器管理が可能な訪問看護師の確保が重要である。
- 緊急連絡先リストを作成
- 電力会社や医療機器供給会社に、停電時の対応を相談する。
- 災害時に自宅待機することも想定して、非常用電源の確保や医療機器の準備、定期点検等を含めた個別支援計画を作成する。
- 外出を希望する場合は、問題点を事前に整理しておく(患者・医師・看護師とともに)

『標準保健師講座』編集室:「2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集」、医学書院、2022、P270-283.
医療情報科学研究所:「クエスチョン・バンク 保健師国家試験問題解説 2023 第15版」メディックメディア、2022.
一般財団法人 構成労働統計協会「国民衛生の動向・厚生の指標 増刊・第69巻9号 通巻第1081号」、2022.
医療情報科学研究所 編:「保健師国家試験のためのレビューブック 2023 第23版」、メディックメディア、2022.
医療情報研究所 編:「公衆衛生がみえる 2022-2023」、メディックメディア、2022.
荒井 直子 他 編:「公衆衛生看護学.jp 第5版 データ更新版」、インターメディカル、2022.
車谷典男・松本泉美 編:「疫学・保健統計ー看護師・保健師・管理栄養士を目指すー」健帛社、2016.
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