学校保健の基本・関係法規
- 日本の学校は、明治5(1872)年の学制発布により開始
- 文部科学省が所管する学校保健行政(学校保健、学校安全、学校体育、学校給食に大別)
- 教育基本法:昭和22年制定、平成18年12月改正
- 学校保健安全法:昭和33年制定、平成27年6月改正
*環境衛生、健康診断、健康相談、保健指導、感染症予防*
第5条:学校保健計画(健康診断・環境衛生検査の計画)
第6条:学校環境衛生基準(換気、採光、照明、保温、清潔保持等)
第7条:保健室 *健康診断、健康相談、保健指導、救急処置等を行う。
第8条:健康相談
第9条:保健指導
*養護教諭その他の職員は連携して、健康相談や健康観察により、児童生徒等の状況を把握。保護者へ必要な助言を行う。
第11条:就学時健康診断(就学4ヶ月前までに実施)
第13条:児童生徒等の健康診断
第15条:職員の健康診断
第19条:出席停止
*学校長は、感染症にかかっている、その疑いまたはおそれのある児童生徒等に対して、出席停止をさせることができる。
学校感染症の出席停止基準(学校保健安全法施行規則)
- 第1種:感染症法の1類感染症、結核を除く2類感染症(治癒するまで)
- 第2種:
インフルエンザ(発症後5日かつ解熱後2日)
麻しん(解熱後3日)
百日咳(咳の消失、または5日間の抗菌性物質製剤による治療終了)
流行性耳下腺炎(腫脹発現後5日)
風しん(発しん消失)
水痘(すべての発しんの痂皮化)
咽頭結膜熱(症状消退後2日)
結核、髄膜炎菌性髄膜炎(感染のおそれがないと認めるまで) - 第3種:腸管出血性大腸菌感染症、細菌性赤痢等
(感染のおそれがないと認めるまで)
第20条:臨時休業(学校・学級閉鎖)
*学校設置者は、感染症予防上必要なとき、臨時に学校の全部・一部の休業を行うことができる。
第23条:学校医・学校歯科医・学校薬剤師(学校三師)
第27条:学校安全計画
- 学校保健計画は養護教諭の協力のもと、保健主事が中心となって原案を作成し、学校保健委員会、職員会議を経て学校長が決定する。
- 学校安全計画は校長などの管理職のリーターシップのもと教職員全体で作成する。
- 学校保健委員会:運営は保健主事が行う
(メンバー:教職員、児童生徒代表、保護者代表、学校三師、地域の関係機関で構成) - 学校教育法:昭和22年制定、令和元年6月改正
学校とは幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校のこと
養護教諭、栄養教諭等の設置(27条)
「学校教育法施行規則」により保健主事の設置(45条)

学校保健にかかわる組織と人材
養護教諭:明治時代の学校看護婦としてトラコーマの洗眼・点眼を実施する学校医の助手として従事
小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校、特別支援学校に配置義務がある
(幼稚園、高等学校にも置くことができる)
養護教諭免許を有した教育職員
(保健師は指定された単位を取得し、都道府県の教育委員会へ申請。2種免許を受けることができる)
- 保健管理:救急処置、健康診断(計画〜評価)、感染症予防等
- 保健教育:授業への参画、保健指導
(保健の授業は小学3年生から実施) - 健康相談
- 保健室経営(一時的な居場所としての役割もある)
- 保健組織活動
- 学校保健計画・学校安全計画策定への参画
保健主事:小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校に置くとされている(指導教諭、教諭または養護教諭)
- 学校保健と学校全体の活動に関する調整
- 学校保健計画の立案・作成
- 学校保健に関する組織活動の推進
- 保健に関する校内研修の企画
学校医
- 学校保健計画・学校安全計画立案への参与
- 必要に応じ、保健管理に関する専門的事項の指導
- 健康相談
- 保健指導
- 健康診断(定期・臨時・就学時)、職員の健康診断
- 疾病予防処置
- 感染症予防に関する指導・助言、食中毒予防処置
- 救急処置
- 学校の環境衛生の維持および改善の指導・助言
学校歯科医
学校医の1〜4と、5〜6のうち歯に関すること
学校薬剤師
学校医の1〜4、9に加え、環境衛生検査への従事
スクールカウンセラー:心理学的見地から
不登校やいじめ、児童虐待、災害時に伴う児童生徒・保護者の心のケアを実施
スクールソーシャルワーカー:福祉的見地から
不登校やいじめ、児童虐待、災害等の相談対応、地域資源へのつなぎを実施
保健管理:学校保健安全法では健康診断の実施について定めている
- 就学時健康診断:小学校入学予定者(市町村教育委員会が実施)就学4ヶ月前までに
栄養状態、脊柱・胸郭の疾病・異常の有無、四肢の状態、視力・聴力、眼の疾病・異常の有無、耳鼻咽喉疾患・皮膚疾患の有無、歯・口腔の疾病・異常の有無、その他の疾病等 - 定期健康診断:児童生徒等(学校が実施)毎学年6月30日までに
栄養状態、脊柱・胸郭の疾病・異常の有無、四肢の状態、視力・聴力、眼の疾病・異常の有無、耳鼻咽喉疾患・皮膚疾患の有無、歯・口腔の疾病・異常の有無
身長、体重、結核の有無、心臓の疾病・異常の有無、尿(起床後1回目の中間尿)
*21日以内に結果通知、健康診断票は卒後5年間の保存義務あり - 臨時健康診断:児童生徒等(学校が実施)
*感染症、食中毒、風水害等による感染症、結核、寄生虫の有無等 - 職員健康診断:学校職員(学校の設置者が実施)定期・臨時
身長、体重、腹囲、視力、聴力、結核の有無、血圧、尿、胃の疾患、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査、その他
5年間の保存義務
環境管理:定期・臨時の環境衛生検査(学校薬剤師が実施)
学校環境衛生基準
- 教室換気:二酸化炭素1,500ppm以下
- 温度:17℃以上28℃以下、相対湿度:30%以上80%以下
- 浮遊粉じん:揮発性有機化合物(ホルムアルデヒド100μg/m3以下等)
- 照度:一般教室300ルクス以上、コンピューターを使用する教室500〜1,000ルクス
- まぶしさ
- 騒音:閉窓時50d B以下、開窓時55d B以下
- 飲料水:遊離残留塩素0.1mg/L以上、大腸菌の検出なし
- 水泳プール:遊離残留塩素0.4mg/L以上、大腸菌の検出なし
- 大掃除の実施
- 雨水の排水溝・排水の施設・設備の管理
- ネズミ、衛生害虫等の対策
- 黒板の色彩の管理
学校給食・食育
食育とは:食育基本法によって推進
食育とは、「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人間を育てること。
5年ごとに食育推進基本計画を作成(農林水産省)
都道府県や市町村は食育推進計画を策定
栄養教諭:学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行う者
幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校に置くことができる。
栄養教諭制度は、平成17(2005)年4月より開始され、平成20年には全ての都道府県に栄養教諭が配置された。
学校保健における健康課題
いじめ
- 「いじめ防止対策推進法」:いじめとは児童等に対して、一定の人的関係にある者が心理的・物理的な影響を与える行為(インターネット含む)で、対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの。
- 認知件数は約51.7万件(小学校が81.4%、中学校が15.6%、高等学校が2.5%)
- 「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」58.8%
- 「パソコンや携帯電話等を用いたいじめ」3.6%
不登校
- 何らかの心理的、情緒的、身体的もしくは社会的要因または背景によって、児童生徒が出席しない、またはすることができない状況(病気または経済的理由による場合を除く)
- 小学校で約6.3万人(1.0%)、中学校で約13.3万人(4.1%)
- 無気力・不安が最も多い
- 保健室や相談室などの学校の居場所を充実させる
- 再登校する際は、参加しやすい方法を提案する
*養護教諭は保護者からの協力、職員の支援体制の確認を行い、児童生徒の心情に配慮した支援を行う。
喫煙・飲酒・薬物乱用
喫煙や飲酒は、薬物乱用のきっかけになりやすいため、学校における喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育が重要。
喫煙防止教室では、実際の場面でも応用できるよう、断り方のロールプレイを行う。
虐待
- 虐待の証拠保全のため、本人の発言や経過の記録、写真やスケッチなどの作成や保管を行う。
- 学校・保育所などから市町村や児童相談所への定期的な情報提供方法
*おおむね1ヶ月に1回、原則として書面で
*被虐待児の出欠状況、欠席時の家庭からの連絡内容、欠席理由を情報提供
*不自然な外傷、家庭環境の変化等を把握した際には、定期的な期日を待たず、市町村または児童相談所に情報提供する。 - 保護者の虐待を子どもが訴えた場合は、保護者には情報源を伝えない。
- 学校や学校の設置者は、虐待通告などの対応に関し、保護者による威圧的な要求や暴力が予想される場合には、児童相談所、警察、弁護士などの専門家と情報共有し、連携して対応する。

特別な支援を必要とする子どもに対する支援
学校生活管理指導表
指導区分
- A:在宅医療・入院が必要
- B:登校はできるが運動は不可
- C:軽い運動は可(ほとんど息がはずまない程度)
- D:中等度の運動可(少し息がはずむが息苦しくはない程度)
- E:強い運動も可(息がはずみ息苦しさを感じるほど)
慢性疾患がある子ども(1型糖尿病)ではインスリン注射の実施や補食の備えなどを行うと共に、低血糖時の症状と対応を教職員全体で共有し、緊急時に備える必要がある。
アレルギーがある子どもには、食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎等があり、緊急時に対応できるよう職員研修を行う。
医療的ケアが必要な子どもの場合は、主治医の指示書に従いケアを実施しなければならない。
養護教諭は、学校や家庭での生活の様子を教員や保護者から情報収集し、学校での医療的ケアの担当者と情報共有して、適切なケア方法を検討する。
特別支援教育:「学校教育法」に明記(72〜82条)
- 特別支援学校、特別支援学級、通級による指導で行われるほか、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校の通常の学級でも行われる。
- 通級による指導:通常学級に在籍しながら、個人の障害に応じて一部の指導を通級指導教室や特別支援学級で受けること。
- 視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、言語障害に加え、平成18(2006)年から新たに学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能自閉症などの発達障害も対象となった。
- 校内委員会を設置:校長のリーダーシップのもと、全校的な支援体制を確立し、児童生徒の実態把握や支援対策の検討などを行う。
- 特別支援学校の教員のうち、研修を受講した者は、一定の条件(保護者の依頼、本人の書面による同意、主治医の同意と指示、適切な医学的管理等)のもと、口腔内・鼻腔内の喀痰吸引、気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう・腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養を行うことができる。

『標準保健師講座』編集室:「2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集」、医学書院、2022、P320-345.
医療情報科学研究所:「クエスチョン・バンク 保健師国家試験問題解説 2023 第15版」メディックメディア、2022.
一般財団法人 構成労働統計協会「国民衛生の動向・厚生の指標 増刊・第69巻9号 通巻第1081号」、2022.
医療情報科学研究所 編:「保健師国家試験のためのレビューブック 2023 第23版」、メディックメディア、2022、P190-203.
医療情報研究所 編:「公衆衛生がみえる 2022-2023」、メディックメディア、2022、P340-349.
荒井 直子 他 編:「公衆衛生看護学.jp 第5版 データ更新版」、インターメディカル、2022、P453-467.
車谷典男・松本泉美 編:「疫学・保健統計ー看護師・保健師・管理栄養士を目指すー」健帛社、2016.
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