母子保健の理念:母子保健は生涯を通じた健康の出発点
次代を担う子どもが健康に育つことを目指して、思春期から妊娠・出産・育児期を通じて母性・父性が適切に育まれ、健全な子育てが行えること、かつ子どもと親の健康が増進することを目的とする。
「性と生殖に関する健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」の概念を含む。
母子保健の関係法規
母子保健法:昭和40年(1965)年に、母性、乳幼児の健康の保持および増進を目的に制定
第5条(国・地方自治体の責務)、第10条(保健指導)、第11条(新生児の訪問指導)
第12条(1歳6か月児・3歳児の健康診査の義務)、第13条(妊産婦および乳幼児の健康診査)
第15条(妊娠の届出)、第16条(母子健康手帳の交付)、第17条(妊産婦の訪問指導等)
第17条の2(産後ケア事業:努力義務)、第18条(低体重児の届出の義務)
第19条(未熟児の訪問指導)、第20条(養育医療:未熟児養育医療)
第22条(母子健康包括支援センター:子育て世代包括支援センター)
- 平成9(1997)年より基本的な母子保健サービスの実施主体が都道府県(保健所)から市町村に移管された。
- 平成25(2013)年には未熟児訪問指導や養育医療の実施主体も市町村へ移管された。
- 新生児マススクリーニング、不妊専門相談などの専門サービスは都道府県(保健所)が実施主体である。
- 平成28(2016)年の一部改正を受け、児童虐待予防や早期発見について明確化された。
市町村は乳幼児健康診査などの施策を通じて、特定妊婦や要保護児童の把握に努めるうえで、母子保健施策と児童虐待防止対策の連携強化を図っている。 - 令和2(2020)年には、妊婦健康診査、乳幼児健康診査、予防接種などの電子化された情報が、転居前後の市町村間で引き継がれるようになった。電子化された情報を個人がマイナポータルで閲覧することも可能になった。
- 令和3(2021)年4月より産後ケア事業の実施は市町村の努力義務となった。
- 令和4(2022)年の「母子保健法」改正により、令和6(2024)年4月には市町村の母子保健に関する相談業務の義務化、子ども家庭支援拠点と子育て世代包括支援センターの一体的な組織への再編(こども家庭センター)が行われる予定である。
児童福祉法
第4条(定義:児童とは18歳未満のすべての者をいう)
(障害児:身体障害・知的障害・発達障害を含む精神障害・難病等の児童)
第6条の2の2(障害児通所支援:児童発達支援、放課後等デイサービス等)
第12条(児童相談所:都道府県の設置義務)
第19条(小児慢性特定疾病について:都道府県)
第20条(結核児童療養給付)
第21条の9(子育て支援事業:市町村)
第21条の10の5(要支援児童等の情報提供)
第25条(要保護児童の保護措置等:市町村、福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならない。
児童委員を介しての通告でもよい)
第25条の2(要保護児童対策地域協議会)
第33条1項(児童の一時保護を行う:児童相談所長)
児童福祉施設とは:乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設、助産施設、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童家庭支援センター、児童発達支援センター
児童相談所とは:児童福祉法に基づく児童福祉のための機関(全国で228か所:令和4年4月1日現在)
児童福祉司、児童心理司、医師、保健師、弁護士などの職員が配置されている。
児童相談所の主な業務:養護相談(53.3%)、障害相談(30.8%):令和2年度福祉行政報告例による
- 市町村への援助
- 専門的な知識・技術を必要とする者への対応
- 調査、医学的・心理学的・教育学的・社会学的・精神保健上の判定
- 児童の健康・発達に関する専門的な指導
- 児童の一時保護
- 児童福祉施設等への入所措置
- 児童の安全確保
- 里親に関する業務
- 養子縁組に関する相談・支援
成育基本法:平成30(2018)年に制定
「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律」
- 成育過程にある者(出生〜大人になるまで)、妊産婦に対する医療
- 成育過程にある者等に対する保健(健康診査・健康診断・健康相談等)
- 教育および普及啓発
- 記録の収集等に関する体制の整備等
- 調査研究
母体保護法:1996(平成8)年に「優生保護法」を全面改正し制定された
母体の生命と健康の保護を目的とする法律
「不良な子孫の出生の防止」の項目は削除
第3条(不妊手術:本人および配偶者の同意が必要)
第14条(人工妊娠中絶:母体保護法指定医が本人および配偶者の同意を得て行う)
第25条(届出:不妊手術・人工妊娠中絶の結果は翌月10日までに都道府県知事に届けなければならない)
児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律):2000(平成12)年に制定された
第2条(児童虐待の定義):身体的虐待、保護の怠慢・拒否(ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待
第5条(児童虐待の早期発見):児童福祉に業務上・職務上関係する者は早期発見に努めなければならない
第6条(児童虐待に係る通告):市町村、福祉事務所もしくは児童相談所へ通告
健やか親子21
平成13〜26(2001〜2014)年の「健やか親子21」の第1次期間の最終評価の主な結果
- 改善:10歳代の性感染症罹患率の減少、妊娠11週以下での妊娠届の提出率の増加、両親の喫煙率の減少
- 悪化:10歳代の自殺率の増加、極低出生体重児・低出生体重児の割合の増加
健やか親子21(第2次)の課題
- 基盤課題A:切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策
- 基盤課題B:学童期・思春期から成人期に向けた保健対策(10代の自殺、肥満・痩身)
- 基盤課題C:子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり
- 重点課題①:育てにくさを感じる親に寄り添う支援
- 重点課題②:妊娠期からの児童虐待防止対策(養育支援訪問事業)
平成27(2015)〜 令和6(2024)年度の期間を対象に
『すべての子どもが健やかに育つ社会を10年後の目指す姿とする健やか親子21(第2次)』が開始された。
少子化社会対策:1.57ショックを機に策定
エンゼルプラン(平成6年)、新エンゼルプラン(平成11年)
少子化社会対策基本法(平成15年)、次世代育成対策推進法(平成15年)
子ども・子育て応援プラン(平成17年)、子ども・子育てビジョン(平成22年)
子ども・子育て支援新制度
社会保障・税一体改革の消費税の引き上げによる財源の一部を活用
市町村は「子ども・子育て支援法」に基づき、5年を1期とする「市町村子ども・子育て支援事業計画」を定めることになっている。
地域子ども・子育て支援事業とは
- 利用者支援事業
- 延長保育事業
- 実費徴収に係る補足給付を行う事業
- 多様な事業者の参入促進・能力活用事業
- 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)
- 子育て短期支援事業(ショートステイ・トワイライトステイ)
- 乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)
- 養育支援訪問事業等(要保護児童対策地域協議会の機能強化)
- 地域子育て支援拠点事業(一般型・連携型)
- 一時預かり事業
- 病児保育事業
- 子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)
- 妊婦健康診査
母子保健推進員:住民と行政のパイプ役
市町村長から委嘱され、母子保健の推進・充実を図る委員型の住民組織
(地域の看護職または母子保健相当の経験あり)
乳児家庭全戸訪問事業で虐待や育児環境の問題等が疑われる家庭を把握した場合は、地域の保健師へとつなぐ
小児対象の公費負担医療制度
- 未熟児養育医療(養育医療):母子保健法(実施主体は市町村)
1歳未満が対象、出生時体重が2,000g以下、生活力が特に薄弱で入院が必要な乳児 - 自立支援医療(育成医療):障害者総合支援法(実施主体は市町村)
18歳未満、身体障害があるまたは障害児となるおそれがあり、治療効果が期待できる児童
*口唇口蓋裂の形成術、先天性股関節脱臼の関節形成術、腎不全の人工透析療法、後天性心疾患のペースメーカー埋め込み術などがある - 結核児童療育給付:児童福祉法(実施主体は都道府県・指定都市・中核市)
骨関節結核その他の結核に罹患し、長期の入院治療が必要な児童 - 小児慢性特定疾病医療助成制度:児童福祉法(実施主体は都道府県・指定都市・中核市)
18歳未満(20歳未満まで延長可)、小児慢性特定疾病に罹患している児童
*ファローの四徴症、急性白血病、成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長症などがある

子育て世代包括支援センター(法的には母子健康包括支援センター)
母子保健法の改正(2016年)により母子保健施策と子育て支援施策を一体的に提供するセンターとして設置
*保健師を1名以上配置すること
- 妊産婦・乳幼児等の実態を把握する
- 妊娠・出産・子育てに関する相談に応じ必要な情報提供・助言・保健指導を行う
- 支援プランを策定する
- 関係機関との連絡調整を行う
妊娠・出産包括支援事業:市町村が実施主体となり切れ目のない支援を行う
【産前・産後サポート事業】妊娠初期から産後1年頃まで
相談支援、仲間づくりの促進(交流支援)を行い、妊産婦とその家族の孤立感の軽減をはかる。
多胎、特定妊婦、障害児を抱える妊産婦等で社会的支援が必要な者も対象
母子保健推進員、主任児童委員、子育て経験者、保健師、助産師、看護師等
アウトリーチ型、デイサービス型がある
【産後ケア事業】出産後1年
母親の身体的回復と心理的安定を促進、セルフケア能力を育み、母子の愛着形成を促す。
助産師・保健師・看護師を1人以上配置(産後4ヶ月までは助産師が中心)
ショートステイ型、デイサービス型、アウトリーチ型がある
妊娠の届出:速やかに市町村長に届けなければならない(母子保健法15条)
届出事項:
届出年月日、氏名・年齢・個人番号・職業、居住地、妊娠月数、診断を受けた医師等の氏名
性病・結核に関する健康診断の有無
医師の診断書は不要
*妊婦の94.6%が満11週以内に届出を行っている*(令和2年度地域保健・健康推進事業報告による)
母子健康手帳:妊娠・出産・育児に関する健康記録
必須記載事項
(全国一律で、妊娠中の経過、乳幼児期の健康診査の記録、予防接種の記録、乳幼児身体発育曲線)
任意記載事項
(自治体独自の制度を記載することもできる、日常生活・育児上の注意、栄養摂取方法、予防接種に関する情報)
妊婦健康診査:市町村は、必要に応じて妊産婦に対して健康診査を行う
妊婦1人につき14回程度の妊婦健康診査の費用を負担する(市町村)
情報は電子記録による一元管理を行うため、医療機関に対して結果の提供を求めるよう努める
妊娠初期〜23週:4週間に1回
血液型検査、血算、血糖、B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV抗体、梅毒血清反応、風疹ウイルス抗体、子宮頸がん検診、超音波、性器クラミジア検査(妊娠30週までに)等
妊娠24〜35週:2週間に1回
期間内に1回 血液検査(血算・血糖)、B群溶血性レンサ球菌検査、超音波検査
妊娠36週〜出産まで:1週間に1回
期間内に1回 血液検査(血算)、超音波検査
*問診・診察、検査計測(子宮底長・腹囲・血圧・浮腫・尿検査・体重等)、保健指導は毎回

不妊症・不育症への支援
不妊症・不育症
- 不妊症:生殖年齢のカップルが妊娠を希望して性生活を行いながらも、1年以上妊娠が成立しない状態をいう。
- 不育症:妊娠しても流産や死産を繰り返し、出産に至らないもの。
- 特定不妊治療費助成:体外受精法や顕微授精法が対象(2022年4月からは保険適用されている)詳しくは厚生労働省のサイトを参照してください。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html
- 令和2年の「全世代型社会保障改革の方針」において、4年度から不妊治療が保険適用されるようになりました。
一般的不妊治療における「人工授精」、生殖医療における「体外受精」や「顕微授精」などで実施される検査や治療が保険適用になりました。結果、エビデンスが認められている治療は保険の中に収載されて、今後エビデンスの積み重ねが必要なものは「先進医療」として申請することになっています。不妊治療における経済的負担はかなり多額なものになっていると思いますので、少しでも負担が軽減すると良いですね。 - 不育症に悩んでいる人(2回以上の流産・死産の既往がある人)が、子どもを産み育てたいという希望をかなえるために、令和2年に関係省庁による「不育症対策に関するプロジェクトチーム」が報告をまとめています。
先進医療の仕組みを活用して認められた不育症検査を実施し、1回につき5万円を上限として助成が行われるようになっています。 - 不妊症・不育症への相談支援としては、令和4年度から女性健康支援センターと統合して、性と健康の相談センター事業の中に位置づけられました。ここでは、①医療機関や自治体で構成される協議会の実施、②不妊症・不育症の社会心理的支援に係るカウンセラーの配置、③当事者団体等におけるピアサポート活動への支援などを対象に、補助額の加算ができるようになっています。
つまり、きめ細かな支援を実施するための体制づくりに国の予算がついたということになります。
出生前検査について
出生前検査は胎児の状況を正確に把握して、将来の予測を立て妊婦とそのパートナーの家族形成のあり方に関わる意思決定を支援する目的で実施されています。
検査については「確定的検査」(羊水検査、絨毛検査)と、診断が確定できない「非確定検査」(母体血清マーカー検査、コンバインド検査、NIPT、胎児超音波検査)に大きく分かれます。
中でもNIPT(Non Invasive Prenatal genetic Testing)の導入は、出生前検査のあり方を大きく変化させたといわれています。令和3年の「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」では、ノーマライゼーションの理念を踏まえた上で、妊婦やそのパートナーに誘導とならない形で情報提供を行うことが適当であるとの見解を示しています。
また行政においては、性と健康の相談センター事業の一部として受検を検討している人に対して、相談・支援ができるような体制整備が図られるようになっています。
思春期:第二次性徴の出現から性成熟までの段階(10〜18歳頃)
心身ともに不安定になりやすい。
健康課題として薬物使用や飲酒、喫煙、いじめ、不登校、自殺、若年妊娠、人工妊娠中絶、摂食障害等がある。
月経異常や思春期早発症といった健康課題もある。
健やか親子21(第2次)では、学童期・思春期から成人期に向けた保健対策が推進されている
(市町村、保健所、児童相談所、学校などの機関が連携し、健康教育を行うことが重要)
妊娠期/産褥期
妊娠期は、妊娠の届出・母子健康手帳の交付時、妊娠の訪問指導、母親・両親学級などの機会に情報提供や支援を行う。
貧血・妊娠高血圧症候群・過剰体重増加防止のための指導等を行う。
つわりは妊娠5〜6週頃に出現し、12〜16週頃には軽減する。
就労している妊婦に対しては、保健師が勤務状況を確認し、「労働基準法」「男女雇用機会均等法」などの保護規定や母性健康管理指導事項連絡カードについて情報提供する。
初産婦については不安を抱きやすい傾向があるため、身体的・心理的状況とともに、支援者の有無や生活環境等の状況も確認し、また継続的な支援体制をつくる。
妊婦健康診査の未受診者では飛び込み出産の可能性があり、母子共に生命に関わるリスクや産後の養育困難が予測されるため、早急に支援することが重要。
マタニティブルーズ・産後うつ
- マタニティブルーズは産褥3〜10日に発症(数日間で消失し一過性のもの)
- 産後の抑うつ状態が2週間以上持続する場合は、産後うつへの移行を疑う。
- エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS:Edinburgh Postnatal Depression Scale)をスクリーニングとして使用(日本では9点以上で産後うつの疑いあり:10〜15%が該当)
- マタニティブルーズ・産後うつは虐待リスク要因でもあるため、保健師は適切な支援を行うことが重要。
- 産婦健康診査事業:2017年から市町村が2回分の費用を助成
(産後ケア事業等を実施する要件を満たした市町村のみ助成可)
育児期:不安や悩みを抱えやすい時期(こころの健康面のサポートが必要)
- 育児不安に対応する時は、母親自身が問題解決できるよう配慮する。
- 否定的な評価をせず、実践できているところを認め支持する。
- 保健師は困りごとや不安を把握し、母親の想いを受けとめて不安緩和を図る。
- 育児環境や養育態度に問題があると疑われる場合には家庭訪問を実施する
(家の状況や児の様子、親の接し方等の情報を得ることが重要) - 子育て世代の交流会や育児グループ活動は、情報交換の場となり不安軽減につながる。
- 市町村の育児相談は、専門職に個別相談できる場であるとともに、保護者同士の交流の機会としても活用できる。
ワーク・ライフ・バランス憲章(2007年)
女性労働者の母性保護に関わる法律
- 男女雇用機会均等法
健康診査を受ける時間の確保、通勤緩和、休憩時間の延長、作業の制限、勤務時間の短縮、不利益扱いの禁止等 - 労働基準法
産前・産後休業(産前6週と産後8週、双胎妊娠の場合は産前14週)、生理日の就業制限、時間外労働・休日労働・深夜業の制限、育児時間の確保(1日2回各々少なくとも30分請求可) - 育児・介護休業法
育児休業、子の看護休暇、所定労働時間の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限等
中高年期
- 健康課題として、更年期障害、老化に伴う膣炎、骨粗鬆症、排尿障害、乳癌・子宮癌等がある。
- 更年期とは:エストロゲンの分泌がしだいに低下し閉経へと至る過程。閉経前後の5年間(合計10年間)をいう。
〜更年期症状〜 - 不規則な月経周期
- 自律神経失調症状(のぼせ、動悸、頭痛等)
- 精神神経症状(憂うつ感、イライラ、不安等)
- 肩こり、腰痛、全身倦怠感、手足のしびれ等
閉経後に不正性器出血がみられる場合は、生殖器疾患の可能性があるため、既往歴や生活状況を確認し、婦人科受診を勧める。
乳幼児の発達過程
発達ポイント(主な乳幼児健康診査の時期)
- 1か月:裸で手足をよく動かす、音に反応する、顔を見つめる
- 3〜4か月:体重が出生時の2倍以上、首がすわる、追視、あやすと笑う
- 6〜7か月:寝返りをする、お座りをする、手を出して物をつかむ、音の方に顔を動かす、人見知りをする
- 9〜10か月:ハイハイ・つかまり立ちをする、小さなものをつまむ、乳歯が生えてくる
- 1歳6か月:ひとりで歩く、コップで水を飲む、スプーンで食べようとする、積み木を2〜3個つむことができる、意味のある言葉を2〜3語話す、簡単な指示に従う、離乳食完了
- 3歳:自分の名前を言う、簡単な文章を話す、指示に従う、大小比較・色の弁別ができる、箸を持って食べる、手を洗う、ままごと・ごっこ遊びをする、階段をひとりで登る、衣服の着脱をひとりでしたがる
1日の体重増加量の目安
- 0〜3か月:25〜30g
- 3〜6か月:20〜25g
- 6〜9か月:15〜20g
- 9〜12か月:7〜10g
乳幼児の成長・発達評価
体重や身長が成長曲線上の3〜97パーセンタイルの範囲を超えている場合は経過観察または医療機関の紹介を検討
カウプ指数 = 体重(kg) ÷ 身長(m)2
指数 判定(おおむね15〜18)
3か月~1歳未満 16~18未満
1歳~1歳6か月未満 15.5~17.5未満
1歳6か月~3歳未満 15~17未満
3歳~5歳まで 14.5~16.5未満
新生児・乳児訪問指導
新生児の訪問指導は、市町村長が育児上必要と認めるときに保健師などに実施させる。
新生児期を過ぎた後も、訪問指導を継続することができる。
訪問指導の目的
- 発育・発達を評価する
- 保護者が自信をもって子育てできるよう支援する
- 家庭環境や家族関係をとらえ、家庭内の協力関係を整える
- 周囲からのサポートや社会資源を活用できるよう支援する
- 支援を継続できるような関係を形成する
新生児の特徴と指導
- 体重が生理的体重減少の最小値から計算して1日25〜30g増加
- 発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の予防のためオムツの当て方や抱き方を確認する
- 脂漏性湿疹や母乳性黄疸が生じることがある
- 光に反応して注視がそれることが多い(視線が合わないことがある)
- モロー反射
- 授乳は欲しがるときに与える(3時間おきに1日8回程度以上)
- 母乳は片側15分程度
- 母親に水分を十分取るように指導する
- 溢乳は生理的現象(噴水状の嘔吐が頻回に見られる場合は受診を勧める)
- 排便は1日3〜5回程度、排尿は10回前後
- 生後1か月程度は昼夜の区別はない
- 不必要な外出は避ける(免疫が十分確立していないため)
早期に診断・治療を行い、重大な障害を防ぐことができる検査
〜 先天性代謝異常症、先天性甲状腺機能低下症等 〜
平成26(2014)4月〜 タンデムマス法を導入
新生児聴覚スクリーニング検査を実施(日齢3日以内)

乳幼児健康診査:実施主体は市町村(母子保健法)
1歳6ヶ月児健康診査・3歳児健康診査の検査内容
身体発育状況、疾病異常(脊柱、胸郭、皮膚、歯、口腔、その他)、栄養状態、四肢運動障害、精神発達状況、言語障害、予防接種の実施状況、育児上の問題事項
*3歳児健康診査では、眼と耳鼻咽頭の疾病異常も追加されている
健康診査では保健師による問診、医師・歯科医師の診察、保健師・管理栄養士・歯科衛生士などによる個別相談や集団指導がある
乳幼児健康診査の意義・役割
- 子どもの疾病や障害の早期発見、早期対応
- 育児不安・虐待リスクの早期発見、早期対応
- 保護者と支援者の出会いの場づくり
- 保護者同士の仲間づくり
- 多職種連携による切れ目のない支援の提供
- 問診や個別相談では家族状況も把握する
- 集団指導では、保護者同士の交流や情報交換の場として活用できる
- 虐待を発見する場にもなる(健康診査未受診など気になる兆候に注意)
- 発達の遅れがみられる場合は、フォローアップを行う(心理職による心理相談や、経過観察のための電話相談や家庭訪問、医療機関の紹介等を行う)
- 心理相談では発育・発達の心配事に対する相談に応じ、発達検査(行動・社会性の評価)を行うとともに、日常的な関わり方について助言する
乳幼児健康診査の問診内容
- 3〜4ヶ月児
首はすわりましたか、あやすとよく笑いますか、見えない方向から声をかけると見ようとしますか、子育てに不安や困難を感じることはありますか・・・あやしても笑わない時は、知的障害や発達障害の可能性がある
抱いた時の反り返りの所見は、運動・知的発達遅滞、脳性麻痺の可能性がある
股関節開排制限(股関節を開き床からの角度が20°以上ある場合)は、大腿皮膚溝または鼠径皮膚溝の非対称を確認する - 1歳6ヶ月児
ひとり歩きしますか、ママ・ブーブーなど意味のある言葉をいくつ話しますか、後ろから名前を読んだ時ふりむきますか、自分でコップを持って水を飲めますか・・・有意語の発語や絵本の指差しがみられず、聴力に異常がない場合には、精神発達遅滞や自閉スペクトラム症などの可能性を考慮し、経過観察を行う。
遅れが続けば療育機関や医療機関を紹介する。 - 3歳児
自分の名前が言えますか、手を使わずにひとりで階段をのぼれますか、クレヨンなどで丸(円)を描きますか、衣類の着脱をひとりでしたがりますか、ごっこ遊びはしますか、遊び友だちはいますか・・・
離乳食:乳汁から幼児食に移行する過程
- 生後5〜6か月頃:1日1回(なめらかにすりつぶして)
- 7〜8か月頃:1日2回食(舌でつぶせる固さ)
- 9〜1か月頃:1日3回食(歯ぐきでつぶせる固さ)
- 12〜18か月頃:1日3回(歯ぐきで噛める固さ)(自分で食べる楽しみを増やす)
乳幼児のリスクアセスメント
不慮の事故による死亡状況(令和3年人口動態統計による)
0歳:窒息(91.8%)、溺死および溺水(4.9%)、交通事故(1.6%)その他
1〜4歳:溺死および溺水(26.0%)、交通事故(24.0%)、窒息(22.0%)、転倒・転落・墜落(18.0%)、その他
災害への備えとして
- 母子健康手帳を常時携帯することが望ましい
- 食料品は最低3日分を備蓄する
- 非常用の持ち出し品(バックに入れて)には、粉ミルク、哺乳瓶、市販の離乳食、おむつ、おもちゃ(最低限)等も年齢に合わせて準備しておく
未熟児・低出生体重児に対する支援
未熟児、低出生体重児の母親は、児の子育てや発育・発達に対して不安が強くなることも予測される。保健師の訪問指導では児の成長を適切にアセスメントするとともに、母親の訴えに耳を傾け(傾聴)不安軽減に努めることが重要。
成長発達障害のリスクがある児に対する支援
障害のある子どもを家族がどのように受けとめているかを把握し、必要な支援は家族を主体として行う。
高度な医療処置(人工呼吸器や胃瘻の管理等)が必要な場合は、入院中から自宅の療養環境について情報収集を行い、アセスメントしたうえで退院カンファレンスに参加し、多職種と連携しながら支援を行う。
親の会(同じ障害を持つ子どもを育てる)への参加は、悩みを共有でき不安解消の機会として有効である。
放課後等デイサービスとは、就学している障害児が授業終了後または学校休業日に通う場所である。
医療的ケア支援法:医療的ケア児及び家族に対する支援に関する法律
- 医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職を防止することで、安心して子どもを生み育てることができる社会の実現に寄与することが目的。
- 法律の施行に伴い、自治体は保育所や学校等で医療的ケア児を受け入れていくための支援体制を拡充していく必要性がある。
- 保護者の付き添いなしで医療的ケア児が施設に通えるよう、保健師や看護師を配置すること、また医療的ケア児支援センターを都道府県が設置することが求められている。

健康上のリスクをもつ母子への保健指導
1 育児力の弱い家族への支援
- 未婚の母子家庭や乳児死亡の経験をもつ家庭、若年夫婦、多問題家族、母親に病気または障害がある時などは、育児力が弱い傾向にある。
- 望まない妊娠の場合、妊娠届を出さず出産することもありハイリスク出産となる。
- 母親の精神障害や知的障害等には、育児支援が必要である。
- 家族やパートナーに協力を得るための手助けをするのも保健師の仕事である。
- 医師、ケースワーカー、民生委員などと連携し支援することも重要である。
2 障害児への支援
- 保健師は家庭訪問などを通して、母親や家族の気持ちを十分受けとめ、前向きな子育てができるよう支援する。
- 家庭での療育体制が整い、親が子の障害を受け入れて積極的になった段階で、地域の親の会などの情報を提供する。
- 成長に合わせて施設への入所・通園についての情報を提供する(育成医療については障害者自立支援法〈現在の障害者総合支援法〉に移行し、自立支援医療費の支給に変更されている)
3 在留外国人母子に対する支援
- 2021(令和3)年6月末現在、282万人強の外国人が日本で生活している。
- 母親が外国人の場合、妊娠・出産・育児について言語、文化、習慣等の違いを感じ、不安に思うことが多い。
- 日本では全ての外国人母子に、医療法、予防接種法、母子保健法、児童福祉法に基づく支援が行われるようになっている。
- 外国語版の母子健康手帳の活用や通訳ボランティアの協力を得ながら支援を行う。
4 孤立化した母子への支援
- 核家族化が進み隣人との交流も希薄化している。
- 専業主婦は、心身の疲労と閉塞感から就労している女性以上に育児不安が生じやすいといわれている。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより行動制限が行われ、保育施設や子育て支援施設等の利用制限がなされ、更なる孤立化が問題となっている。
- 保健師には民生委員・児童委員・母子保健推進員と協働し、支援していくことが求められている。
児童虐待:2020(令和2)年度の相談対応件数は 205,044件
- 身体的虐待
児童の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること
(タバコの火の押し付け、冬の戸外への締め出し等) - 保護の怠慢・拒否(ネグレクト)
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、長時間の放置、保護者以外の同居人による同様の行為の放置、その他の保護者として監護を著しく怠ること
(おむつ交換せずに放置、病気でも受診させない等) - 心理的虐待:相談件数の約6割を占める
児童に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力、その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
(言葉による脅し、無視、他のきょうだいとの差別的な扱い) - 性的虐待
児童にわいせつな行為をすること、またはわいせつな行為をさせること
(性的関係の強要、お風呂に無理やり一緒に入る等)
虐待を発見するためのサイン
- 揺さぶられっ子症候群
生後6か月以内の子を過度に揺することで頭蓋内出血や眼底出血、運動障害や発達障害を起こす。 - 代理によるミュンヒハウゼン症候群
周囲の関心を集めるために子の病気や怪我を捏造する行為が認められる。 - 愛情遮断症候群
親の愛情が欠如していたり、家庭崩壊など精神的圧迫が加えられた時に成長障害が起こる(嘔吐・下痢・異常行動等もみられる)
児童虐待防止法:「児童虐待の防止等に関する法律」平成12(2000)年制定
児童虐待防止に関する施策を促進し、児童の権利・利益を擁護する。
- 第2条 児童虐待の定義
身体的虐待、保護の怠慢・拒否(ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待 - 第5条 児童虐待の早期発見
児童の福祉に業務上・職務上関係する者は、児童虐待を発見しやすい立場であることを自覚し、早期発見に努めなければならない。
*学校教職員、医師、保健師、看護師、弁護士、警察官、婦人相談員・・・は早期発見に努めるとともに、知り得た秘密を漏らしてはいけない(守秘義務) - 第6条 児童虐待に係る通告
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに市町村、福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならない。「児童福祉法 第5条」と同義。
*この場合は守秘義務違反や「個人情報保護法」の違反にはあたらず、保護者の同意を得る必要はない。
児童虐待防止法 第14条1項(平成28年、令和元年改正)
虐待に至るリスク
虐待者の構成割合:実母(47.4%)、実父(41.3%)で実父の割合が年々増加してきている。
*令和2年度福祉行政報告例より*
- 保護者側のリスク要因
望まない妊娠、若年妊娠、子の長期入院等による愛着形成不全、マタニティブルーや産後うつ病、精神・知的障害、慢性疾患、アルコールや薬物の依存、子育て上の不安・ストレス、被虐待経験等 - 子ども側のリスク要因
乳児期の子ども、未熟児、障害児、多胎児、育てにくさをもつ子ども等 - 養育環境のリスク要因
経済的不安定、孤立した家庭、ひとり親家庭、子連れの再婚家庭、夫婦不和、DV家庭等 - その他ハイリスクな状況
妊娠届出の遅延、妊婦・乳幼児健康診査未受診、飛び込み出産、きょうだいへの虐待歴等
特定妊婦とは
若年、未婚やひとり親、望まない妊娠、経済的困窮、心身の問題、母子健康手帳未交付、妊娠届の妊娠後期の提出や未提出、妊婦健康診査未受診や受診回数が少ない、要保護児童・要支援児童を養育している等
- 要支援児童とは乳児家庭全戸訪問等で把握した、保護者の養育を支援することが特に必要と認められた児童を指す。
- 要保護児童とは、保護者のない児童、保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を指す(非行児童なども含まれる)
要保護児童対策地域協議会:子どもを守る地域ネットワーク
居住実態が把握できない児童については、要保護児童対策地域協議会を活用し、関係機関で情報を共有する。
- 代表者会議
年1〜2回程度の開催。各関係機関の責任者レベルで連携を深める。 - 実務者会議
3ヶ月に1回程度の開催。すべてのケースの定期的な状況確認を行う。
主担当機関の確認、支援方針の見直し等を行う。 - 個別ケース検討会議
適宜開催され、個別のケースに直接かかわっている者や今後かかわる可能性がある関係機関の担当者が出席する。
危険度や緊急度の判断や支援内容の検討を行う。
DV法:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(2001年制定)
- 暴力に関する通報や相談、保護、自立支援などの体制を整備する。
- 婦人相談所等に設置される配偶者暴力相談支援センターが窓口。
- 暴力を発見した者は、配偶者暴力相談支援センターまたは警察官に通報するよう努めなければならない。
- 生命や身体に重大な危害を受けるおそれがある場合は、地方裁判所が配偶者からの暴力に対する保護命令を出すことができる(10、11条)
- DV被害については安全が最優先される。質問をするときは回答しやすいよう「はい」「いいえ」で答えられるように配慮する。
- DVが起きている家庭では、子どもの心理的虐待が懸念されるため、子どもの心身の状態にも十分なアセスメントをしなければならない。
令和6(2024)年4月に婦人相談所は女性相談支援センターに変更される予定。

文献
『標準保健師講座』編集室:「2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集」、医学書院、2022.
医療情報科学研究所:「クエスチョン・バンク 保健師国家試験問題解説 2023-24 第16版」メディックメディア、2023.
一般財団法人 構成労働統計協会「国民衛生の動向・厚生の指標 増刊・第69巻9号 通巻第1081号」、2022.
医療情報科学研究所 編:「保健師国家試験のためのレビューブック 2023-24 第24版」、メディックメディア、2023.
医療情報研究所 編:「公衆衛生がみえる 2022-2023」、メディックメディア、2022.
荒井 直子 他 編:「公衆衛生看護学.jp 第5版 データ更新版」、インターメディカル、2022.
車谷典男・松本泉美 編:「疫学・保健統計ー看護師・保健師・管理栄養士を目指すー」健帛社、2016.
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