2024年版 対象別公衆衛生看護活動論(精神保健)のまとめ

目次

精神保健福祉の概要:令和2(2020)年現在

精神障害の総患者数は約420万人
入院患者数は30万人(2020年6月現在)

  • 措置入院 1,494人
  • 医療保護入院 130,232人
  • 任意入院 136,502人
  • その他入院 852人

入院患者の割合は、統合失調症・統合失調型障害及び妄想性障害が50.9%、気分障害(躁うつ病含む)が9.9%、アルツハイマー病が16.4%、血管性及び詳細不明の認知症が9.2%

外来患者の割合は、気分障害(躁うつ病含む)が28.1%、統合失調症・統合失調型障害及び妄想性障害が19.7%、神経症性障害・ストレス関連障害及び身体表現性障害が18.6%、アルツハイマー病が14.7%

精神科病院数 1,054件 精神科病院のうち96%が民間立  病床数は全体の21.4%が精神科
平均在院数 265.8日(一般病床は16.0日)

精神保健対策の変遷

  • 昭和25(1950)年:「精神衛生法」制定
    都道府県に精神病院設置の義務付け、私宅監置の廃止、精神衛生鑑定医制度
  • 昭和40(1965)年:「精神衛生法」改正〈昭和39年のライシャワー事件が契機〉
    保健所が精神保健行政を担う規定、通院医療費公費負担制度
  • 昭和62(1987)年:「精神保健法」へ改題・改正〈昭和59年の宇都宮病院事件が契機〉
    人権擁護、任意入院・応急入院制度の規定、精神保健指定医制度
  • 平成5(1993)年:「精神保健法」見直し
    社会復帰の促進、グループホームの法定化
  • 平成7(1995)年:「精神保健福祉法」へ改題・改正
    精神障害者保健福祉手帳の創設、市町村の役割明示
  • 平成11(1999)年:「精神保健福祉法」改正
    医療保護入院の要件の明確化・患者の移送制度の規定
  • 平成14(2002)年:「精神保健福祉法」改正
    在宅福祉サービスの法定化
  • 平成25(2013)年:「精神保健福祉法」改正
    地域生活への移行を推進、保護者制度廃止、医療保護入院の見直し

長期入院の精神障害者の地域移行としては平成22(2010)年に精神障害者地域移行・地域定着事業となり、その後「障害者総合支援法」のサービスである地域相談支援の地域移行支援、地域定着支援へと移行した。

精神疾患の患者数の増加を受け、平成24(2012)年に「医療法施行規則」が改正され、精神疾患が医療計画に追加されて、5疾患5事業となった。

精神保健福祉法:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

「障害者総合支援法」とともに社会復帰の促進、自立・社会経済活動への参加促進に必要な支援を行う。

精神保健指定医は厚生労働大臣により指定を受ける。

精神障害者の入院形態

  • 任意入院(20、21条):精神保健指定医の診察必要なし
    本人の申し出があれば退院可能(指定医が認めれば72時間の退院制限が可能)
  • 医療保護入院(33条):指定医一人の診察
    家族等(配偶者、親権者、扶養義務者、後見人または保佐人)の同意を得て行われる。
    10日以内に知事に届出
  • 応急入院(33条の7):指定医一人の診察
    家族等の同意が得られない場合、入院期間は72時間以内、直ちに知事に届出、知事指定病院に限る。
  • 措置入院(29条)指定医二人以上の診察
    自傷他害の恐れがある、国立・都道府県立精神科病院または指定病院に限る。
  • 緊急措置入院(29条の2):指定医一人の診察
    自傷他害の恐れが著しく、指定医を二人確保できない場合、入院期間は72時間以内

精神保健福祉センター:精神保健福祉法(6条) 都道府県・指定都市が設置

地域住民の精神的健康の保持増進、精神障害の予防、適切な精神医療の推進、自立と社会経済活動の促進等(精神科医、精神保健福祉士、臨床心理技術者、保健師等を配置)

  1. 企画立案
  2. 保健所と関係機関に対する技術指導と技術援助
  3. 関係諸機関の職員に対する教育研修
  4. 精神保健に関する普及啓発
  5. 調査研究
  6. 精神保健福祉相談(複雑・困難なもの)
  7. 協力組織の育成
  8. 精神医療審査会に関する事務
  9. 自立支援医療の支給認定、精神障害者保健福祉手帳の判定

精神障害者保健福祉手帳:平成7(1995)年〜

交付を受けた者は、税制上の優遇措置、公共料金の減免などのサービスを受けられる。
市町村が窓口で、都道府県知事が認定・交付する。2年ごとに判定を受ける。
(統合失調症、うつ病、てんかん、高次機能障害、発達障害等)

精神疾患を有する対象の特徴

社会・心理的な要因、遺伝・体質的な背景、脳・神経系の器質的異常の3つが絡み合って発症

  1. 発症早期のうちに治療につなげることが難しい。
  2. 医療の継続に困難を伴い、その影響が他者に及ぶ場合がある。
  3. 精神障害による社会生活上の困難が理解されにくい。

精神障害者に対する支援

  1. 治療開始に向けた支援
    精神障害者本人に自覚がない、または疾患を認めない場合が多いため、本人以外の人(家族・近隣住民等)から相談が持ち込まれることが多い。
    情報を収集し、緊急性の判断、今後の対応方法の選択を行う。
    保健所の精神保健福祉相談があり、精神科医に相談する機会が設けられていることもある。
    保健師としては本人に会える可能性がある家庭訪問や面接相談を提案する。
    拒否や症状悪化の可能性がある家庭訪問では、複数の支援者で訪問することが望ましい。
    緊急時であっても信頼関係の形成が重要(共感的態度、根気強く、説得は避ける、家族を支援等)
  2. 退院に向けた支援
    必要に応じて訪問看護の導入を検討
  3. 治療継続のための支援
    内服治療の継続が重要、生活状況や受診状況の把握をし支援すること。
    生活リズムを整え、日中の居場所を確保するため、地域の社会資源を活用する。
    家族に対しては、必要に応じて受診同行の提案や家族会の紹介等を行う。
  4. 社会復帰のための支援

近隣住民からの相談

  • 保健師は公平・公正な立場をとる。
  • 困っていることやその理由等に傾聴し、受容する。
  • 保健師は本人や家族からも事実や過程を聞き、今後の対応を一緒に考える。
  • 個人情報保護や守秘義務の観点から、近隣住民に精神障害者本人の病状や病歴等を提供してはならない。

地域社会での精神保健福祉活動

  1. ハイリスク者の早期発見
  2. 精神障害者に対応した地域包括ケアシステムの構築
  3. 地域における社会資源の創出
  4. 精神障害者の人権を守る精神保健福祉活動

発達障害者支援法

発達障害者は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害があって、その症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されている。

発達障害者支援センター:都道府県・指定都市は設置できる
相談に応じ、医療・保健・福祉・教育・労働などについて総合的な支援を行う専門機関

発達障害者(児)に対する支援

集団生活や家庭での様子を情報収集し、パニック等の症状のきっかけや原因についてアセスメントする。
障害に応じた特徴を把握し、対応方法や対策を家族や関係機関と情報共有(調整・支援)する。

  • 広汎性発達障害:事前に予定を伝える、視覚情報(イラストや写真)を活用、曖昧な表現を避ける。
  • 学習障害:学習方法の工夫(ふりがな、計算機・・・等)
  • 注意欠陥多動性障害:指示は簡潔に、座席は最前列の位置にして集中できるよう工夫をする。

失敗や挫折を繰り返すことにより二次障害が発現することがある。
(暴言・暴力・不登校・引きこもり・反社会的行動等)
自己肯定感が持てるよう対応することが大切。

自殺対策基本法:
社会問題ととらえ、国、地方自治体、事業主、国民の責務を明確化

自殺の防止と自殺者の親族等の支援の充実を図り、生きがいを持って暮らすことができる社会の実現を目的としている。

自殺総合対策大綱:平成19(2007)年に策定され、令和4(2022)年に見直し

重点施策

  1. 地域レベルの実践的な取り組みを支援・強化
  2. 国民一人ひとりの気づきと見守りを促す
  3. 調査研究等を推進する
  4. 人材の確保、養成および資質向上
  5. 環境の整備と、心の健康づくりの推進
  6. 適切なサービスを受けられるようにする
  7. 社会全体の自殺リスクを低下させる
  8. 自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐ
  9. 遺された人への支援を充実する
  10. 民間団体との連携強化
  11. 子ども・若者の自殺対策を更に推進
  12. 勤務問題による自殺対策を更に推進
  13. 女性の自殺対策を更に推進する(2022年10月〜)

目標:令和8(2026)年までに自殺死亡率を平成27(2015)年と比べ、30%以上減少させる

統合失調症

  • 10歳代後半から20歳代に発症することが多く、幻聴や妄想などの陽性症状と思考障害や意欲の低下、感情の鈍化などの陰性症状が生じる。
  • 発症から1年未満の薬物治療開始は症状の再燃が少なく、慢性期に出現する生活機能障害を軽減することにつながる。
  • 陽性症状が安定した後は、低下した生活機能や社会的技能を向上せせるための支援を行う。
  • 就学や就労に向けた訓練や本人に適した就労への支援を地域援助事業者やハローワークなどの機関とともに行う。

うつ病・双極性障害

  • うつ病は、ほとんど毎日の抑うつ気分、興味・喜びの著しい減退により何らかの支障を生じている状態が2週間以上続く。
  • 説得や励ましは禁忌で、共感・受容的な態度で接すること。
  • 希死念慮や自殺企図などがあり緊急性が高い場合は精神科医の診察を受けるよう伝え、確実な受診に向けて支援する。(回復期の自殺に注意)
  • 双極性障害は、軽躁〜躁状態の時には調子が良いと本人が感じ、病識がなく、治療中断のリスクが高くなる。保健師は受診同行などにより治療継続に向けた支援を行う。

若年性認知症

65歳未満で発症した認知症で記憶力の低下、見当識障害、思考や判断力の低下など日常生活に支障をきたす疾患。

本人・配偶者に退職は急がず、上司や産業医等へ相談することを助言する。
都道府県に配置されている若年性認知症支援コーディネーターや若年性認知症コールセンターなどの専門相談も利用できる。

依存症:精神依存・身体依存を起こす(薬物・アルコール・ギャンブル・買い物等)

  • 家庭や職場でもさまざまな問題が発生
  • 患者と家族が相互に依存し合い、問題行動を助長することもある(共依存関係)
  • セルフヘルプグループや家族会を紹介する

薬物依存症(覚せい剤・大麻・麻薬・危険ドラッグ等)

  • 覚せい剤が最も多く(8,654人検挙)、ついで大麻(5,260人検挙)で過去最大になった(令和2年統計による)
  • 青年期〜成人期に多い。
  • 学校保健の中で薬物乱用防止教育を充実させることが必要。

アルコール依存症

  • 飲酒歴や心身状態の重篤度を判断し、必要に応じて医療機関受診を勧める。
  • 飲酒を止めることで離脱症状(手指の振戦、せん妄、幻覚等)が生じる。
  • 断酒会、AA等への参加が重要。
  • 飲酒した状態では面接は行わず、別日を再設定する。
  • 精神的なサポートとして家族の協力が欠かせない。
  • 飲酒の継続を可能にしてしまう家族や友人をイネイブラーという。
    (本人が直面するはずだった問題を本人にかわって行うことにより、飲酒継続を助長させてしまう)
  • 平成25(2013)年に「アルコール健康障害対策基本法」が制定される。

摂食障害:神経性無食欲症と神経性大食症に分類

BMI 17.5以下は神経性無食欲症の診断基準のひとつである(ICD-10 )
著しい低体重、無月経、食行動の異常、ボディイメージの歪み、自己誘発性嘔吐、下剤の乱用等)

本人に病識がなく、精神科受診を拒否する場合がある(まずは内科・小児科受診を勧める)

パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害(リストカットや過量服薬等)では、操作的であることが多く、家族や支援者などの関係者を巻き込んで混乱させることも少なくない、支援者は統一した対応を取ることが重要である。

ひきこもり

さまざまな要因の結果として社会参加を回避し、原則的には6ヶ月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている状態。

本人とのやりとりが可能になるまでは家族を介した関わりを継続する。
タイミングをみて本人と会い、必要に応じて精神医学的評価につなげていく。
精神疾患の有無を確認することが重要
本人のニーズをアセスメントし必要に応じて、セルフヘルプグループを紹介する。

ひきこもり対策推進事業・制度

  • ひきこもり地域支援センター設置運営事業
  • ひきこもり支援に携わる人材の養成研修事業
  • ひきこもりサポート事業
  • その他(制度として生活困窮者自立支援制度や就職氷河期世代活躍支援などがある)

文 献

『標準保健師講座』編集室:「2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集」、医学書院、2022.
医療情報科学研究所:「クエスチョン・バンク 保健師国家試験問題解説 2023-24 第16版」メディックメディア、2023.
一般財団法人 構成労働統計協会「国民衛生の動向・厚生の指標 増刊・第69巻9号 通巻第1081号」、2022.
医療情報科学研究所 編:「保健師国家試験のためのレビューブック 2023-24 第24版」、メディックメディア、2023.
医療情報研究所 編:「公衆衛生がみえる 2022-2023」、メディックメディア、2022.
荒井 直子 他 編:「公衆衛生看護学.jp  第5版 データ更新版」、インターメディカル、2022.
車谷典男・松本泉美 編:「疫学・保健統計ー看護師・保健師・管理栄養士を目指すー」健帛社、2016.

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