2024年版 産業保健のまとめ

目次

産業保健の目的:ILO、WHO合同委員会による

  • すべての労働者の身体的・精神的・社会的健康を最高度に維持・増進させること
  • 作業条件に起因する疾病を予防すること
  • 健康に不利な環境から労働者を保護すること
  • 労働者の生理的・心理的特性に適応する作業環境に配置すること

労働基準法:昭和22年制定、令和2年3月改正

  • 法定労働時間(原則40時間、1日8時間を超えて労働させてはならない) *32条
  • 年少者の就業制限 *56〜63条
  • 妊産婦等の就業制限 *64条の2〜68条
  • 使用者による業務上の負傷・疾病における補償 *75〜88条
  • 働き方改革関連法(2018)により、時間外労働の限度時間は原則45時間、年360時間と定められた。

労働基準法に基づく災害補償の例

  • 療養補償(第75条):使用者は療養費を負担する
  • 休業補償(第76条):使用者は平均賃金の6割の補償を行う
  • 障害補償(第77条):使用者は障害の程度に応じた補償を行う

労働安全衛生法:昭和47年制定、令和元年6月改正

  • 衛生管理者について *12条
  • 産業医について *13条
  • 衛生委員会について *18条
  • 労働衛生の3管理(作業環境管理、作業管理、健康管理)*65〜66条の10
  • 健康管理手帳の交付 *67条
  • ストレスチェックの義務化 *66条の10  平成26年6月〜
  • 事業場の受動喫煙防止の努力義務化 *68条の2

平成30(2018)年の労働安全衛生法改正により、長時間労働者に対する面接指導などが強化された。
事業者は時間外労働が月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者で、本人からの申し出がある場合、医師による面接指導を行わなければならない。

労災保険法:労働者災害補償保険法 昭和22年制定、令和2年6月改正

労働災害の認定は、労働基準監督署が行う
保険料は事業主が負担

高年齢者雇用安定法:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 昭和46年5月制定、令和2年3月改正

  • 事業者は従業員の定年を定める場合は、原則60歳を下回ることはできない
  • 高年齢者雇用確保措置:65歳までの安定した雇用確保の義務
  • 高年齢者就業確保措置:70歳までの安定した就業機会の確保の努力義務

労働者の出産・育児・介護にかかわる法律

労働基準法

  • 産前6週間(多胎では14週間)、産後8週間(申請により6週間)の就業禁止 *65条
  • 生後満1年に達しない児の育児時間の請求(1日2回少なくとも1回30分) *67条
  • 妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限 *66条

男女雇用機会均等法

  • 雇用機会、昇進、昇格等について性差別を禁止 *5、6条
  • 婚姻、妊娠、出産等を理由とした解雇の禁止 *9条
  • セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントに対する雇用管理上の措置 *11条。11条の3
  • 妊娠中・出産後の保健指導または健康診査を受けるための時間の確保 *12条
  • 主治医が記入した「母性健康管理指導事項連絡カード」の内容に応じて、事業主は措置を講じる。

育児・介護休業法

  • 育児休業(1歳未満の子) *5条
  • 子の看護休暇 *16条の2
  • 介護休業(労働者の家族) *11条
  • 育児・介護休業に関するハラスメントに対する雇用管理上の措置 *25条
  • 令和3(2021)年の改正では、仕事と育児を両立できるよう、産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)の創設や雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置の義務化が行われた。令和4年4月から段階的に施行される予定。

労働安全衛生に関する行政機構:厚生労働省の直轄機関、都道府県労働局と労働基準監督署による

労働基準監督署

労働保険の認定、労働時間、賃金、労災防止、健康診断等の監督・指導を実施

産業保健活動総合支援事業:平成26(2014)年4月〜

地域産業保健事業、産業保健推進センター事業、メンタルヘルス対策支援事業を実施

  • 産業保健総合支援センター
    事業者や産業保健スタッフ等を対象に、専門的な相談への対応や研修等を行う
    産業保健に関する情報提供
    地域産業保健センターの運営
  • 地域産業保健センター
    労働者数50人未満の事業場を対象に、相談等への対応を行う
    個別訪問指導(医師等による職場巡視)

産業スタッフ

総括安全衛生管理者:一定以上の規模の事業場で選任が義務づけられている

  • 現場の安全や衛生に関する業務が円滑に実施されるよう、安全管理者・衛生管理者を指導
  • 工場長や支店長が充てられる

衛生管理者:労働安全衛生法で規定されている国家資格

  • 常時50人以上の労働者を使用する事業場において選任しなければならない。
  • 少なくとも毎週1回、作業場を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに措置を講じなければならない。
  • 保健師免許を持つ者は、申請により第一種衛生管理者の免許が取得できる。

産業保健師

  • 業務に起因する健康障害の予防
  • 労働者の心身両面の健康の保持増進のための支援
  • 働きやすい職場環境づくり
  • ワーク・ライフ・バランスの推進
  • 必要に応じて職場巡視を行い、健康課題を見極め、対策の検討を行う。

産業医

  • 常時労働者が50人以上の事業場では、産業医を選任し、健康管理を行わせなければならない。
  • 常時1,000人以上の労働者、または常時500人以上の労働者を特定の業務に従事させている事業場では、専属の産業医をおかなければならない。
  • 産業医は原則として少なくとも毎月1回、職場巡視をしなければならない。

衛生委員会・安全委員会・安全衛生委員会

衛生委員会:50人以上の事業場
健康の確保に必要なことを調査審議する
(総括安全衛生管理者等、衛生管理者、産業医、労働者の代表、作業環境測定士)

安全委員会:林業等で50人以上、電気業等で100人以上の事業場
安全の確保に必要なことを調査審議する
(総括安全衛生管理者等、安全管理者、労働者の代表)

安全衛生委員会:安全委員会と衛生委員会の両方の設置が必要な事業場
労働者の安全と健康の確保に必要なことを調査審議する
(総括安全衛生管理者等、安全管理者、衛生管理者、産業医、労働者〈安全・衛生〉の代表、作業環境測定士)

衛生委員会(または安全衛生委員会)は、労働者の健康障害防止や健康の保持増進のための基本対策、労働災害の原因および再発防止などを調査・審議し、事業者に対して意見する。

労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS):事業場における安全衛生水準の向上が目的 自主的な安全衛生活動の仕組み

  1. 安全衛生方針の表明
  2. リスクアセスメント
  3. 安全衛生目標の設定
  4. 安全衛生計画の作成・実施・評価・改善

    *定期的なシステム監査を行う*

労働衛生の3管理(1〜3)/5管理(1〜5)

  1. 作業環境管理有害因子を除去または一定レベル以下に管理
  2. 作業管理:作業内容・方法などを管理し、作業負荷や有害因子への曝露を軽減
    (作業の強度、方法、時間、量などを管理)
  3. 健康管理:健康障害の防止を図る。健康の保持増進を図る。
    (健康診断や事後措置、保健指導のこと)
  4. 労働衛生教育:労働衛生に関する教育を行うことで、健康に関する問題の発生予防・改善を図る。
  5. 総括管理:1〜4の実施体制を構築・管理し、円滑かつ効果的に行えるようにする。

健康管理(一般健康診断・特殊健康診断・事後措置・健康管理手帳)

一般健康診断

  • 雇用時の健康診断:雇用時、3ヶ月以内の健診でも可
  • 定期健康診断:1年1回
  • 特定業務従事者の健康診断:配置換え時、6ヶ月以内ごと
  • 海外派遣労働者の健康診断:派遣前、帰国後
  • 給食従業員の検便:雇用時、配置換え時(検便のみ)

〈基本検査項目〉
既往歴・業務歴の調査、自覚症状・他覚症状、身長・体重・腹囲・視力・聴力、胸部エックス線検査、血圧、尿検査、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、遅延なく定期健康診断結果報告書を労働基準監督署長に提出しなければならない。

有所見率は58.5%(令和2年):血中脂質検査が最も高い
健診結果は、5年間の保存義務がある

特殊健康診断

高気圧、放射線、特定化学物質、鉛、四アルキル鉛、有機溶剤、石綿等の業務従事者が対象
じん肺健康診断は、「じん肺法」に定められている(就業時・定期・定期外・離職時)
記録は原則5年間保存であるが、粉じん作業は7年、放射線業務は30年、石綿業務は40年、特定化学物質業務のうち特別管理物質は30年である。

事後措置

健康診断結果、必要がある場合は、就業場所の変更や就業時間の短縮、作業環境測定の実施などの措置を行わなければならない。
必要時、医師または保健師による保健指導を受けさせるよう努めなければならない。

健康管理手帳

都道府県労働局長は、がんなどの健康障害を生じる恐れがある者のうち、一定の要件に該当するものに対し、離職の際または離職の後に、健康管理手帳を交付する。
(石綿、ジクロロプロパン等の物質製造または取り扱い)

手帳保持者に対しては、指定医療機関において、国が無料で定期的な健康診断の機会を供与している。

産業・組織における問題と心理支援

50名以上の事業場には、産業医を選任することが義務になっていますが、カウンセラーを配置するEAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)を取り入れる企業があります。EAPには外部EAPと内部EAPがありますが、内部では社内でカウンセリングを受けることができる体制が整っています。

過労死について:過労死等防止対策推進法 第2条より

  1. 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  2. 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  3. 死亡には至らないが、これからの脳血管疾患・心臓疾患・精神障害

労災認定される際には、異常な出来事に遭遇したことや過重業務に就労したことによって判断されます。

過重労働とは

① 不規則、② 長時間拘束、③ 出張が多い、④ 交代制、⑤ 深夜、⑥ 作業環境(温度・騒音・時差)、⑦ 精神的緊張を伴うといった要因から評価されます。

ハラスメントとは?
ハラスメントを受けることで、うつ病、希死念慮、睡眠障害、心疾患等を引き起こす可能性があります。

セクシャルハラスメント
男女雇用機会均等法で事業主が講ずべき措置を定めています。
労働者の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により労働条件に不利益を受けたりすること。

パワーハラスメント
刑法や民法を根拠とした判例があります。
職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的な苦痛を与えること。

マタニティハラスメント
男女雇用機会均等法、育児・介護休業法が根拠になっています。
労働者が妊娠・出産・育休の申し出・取得等をした事を理由として、事業主が解雇したり、上司・同僚からの言動により、休暇、育休等の申し出・取得した者の就労環境が害されること。

2019年5月に「労働施策総合推進法」が改正されて2020年6月1日から、パワーハラスメント対策が大企業の義務となっています。

ストレスチェック制度

2006(平成18)年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」が公表され、事業場におけるメンタルヘルスケアが実施されていました。
精神障害を発病して労災認定される労働者が増加。
2014(平成26)年に「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が施行されてストレスチェック制度が導入されました。

厚生労働省 「ストレスチェック制度 導入マニュアル」はこちら

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf

ストレスチェックは57項目で構成された「職業性ストレス簡易調査票」の利用が推奨されています。
高ストレス者には医師の面接指導を勧めることになっています。

4つのケアとは

  • セルフケア:ストレスへの気づき、ストレスへの対処法などを理解する
  • ラインケア:職場環境の改善、労働者からの相談対応、職場復帰における支援など
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア:社内のスタッフ(産業医や保健師等)が労働者や管理監督者に対する支援を実施する
  • 事業場外資源によるケア:情報提供や助言を受けるなど、外部のサービスを活用したり、ネットワークの形成をしたりして職場復帰に向けた支援を行うこと(例としてEAPなどがある)

ストレスチェック制度は事業者の責任で実施されますが、従業員に不利益な取り扱いを行うことは一切禁止されています。
事業者はストレスチェックの結果を閲覧することはできませんし、労働者の同意なく第三者に結果を開示することは法律違反。
ストレスチェックは医師や保健師、必要な研修を修了した公認心理師や看護師、精神保健福祉士などによって実施されています。

現在の仕事や職場生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者
=53.3%(令和3年労働安全衛生調査より)

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)

働くすべての人が「仕事」と「仕事以外の生活」の調和をとり、その両立を充実させる働き方・生き方のことです。
仕事と子育て、介護との両立が難しいということで、なかなかバランスが取れていないのが現状です。

女性の妊娠中には

  1. 深夜勤務及び時間外勤務の制限
  2. 健康診査等のため有給
  3. 業務軽減等
  4. 休息、補食のための有給
  5. 通勤緩和のための有給 ・・・ などが利用できます

「治療と職業生活の両立等支援対策事業」について

労働安全衛生法では、事業者による労働者の健康確保対策に関する規定が定められており、健康診断の実施及び医師の意見を勘案し、就業上の措置を行うという義務が課せられています。
また日常生活面での指導や受診勧奨なども行う必要性があります。

就労支援

リワークって何?

精神疾患等によって休業している従業員が復帰する際に支援する方針を厚生労働省がまとめています。

「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜」
*医療リワーク:医療機関で精神科治療を受けながら実施されます。
*職リハリワーク:障害者職業センターで支援プランに基づく支援が実施されます。
*職場リワーク:企業内やEAPなどで、企業が費用を負担し実施されます。

第1ステップ:病気休業開始および休業中のケア
第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断
第3ステップ:職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成
第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ

障害者の就労支援について

就労継続支援にはA型事業所とB型事業所があります。
A型の対象は:通常の事業所で雇用されることは困難だが、雇用契約に基づく就労が可能な者
B型の対象は:通常の事業所で雇用されることは困難で、雇用契約に基づく就労も困難な者

文 献

『標準保健師講座』編集室:「2023年版 医学書院 保健師国家試験問題集」、医学書院、2022.
医療情報科学研究所:「クエスチョン・バンク 保健師国家試験問題解説 2023-24 第16版」メディックメディア、2023.
一般財団法人 構成労働統計協会「国民衛生の動向・厚生の指標 増刊・第69巻9号 通巻第1081号」、2022.
医療情報科学研究所 編:「保健師国家試験のためのレビューブック 2023-24 第24版」、メディックメディア、2023.
医療情報研究所 編:「公衆衛生がみえる 2022-2023」、メディックメディア、2022.
荒井 直子 他 編:「公衆衛生看護学.jp  第5版 データ更新版」、インターメディカル、2022.
車谷典男・松本泉美 編:「疫学・保健統計ー看護師・保健師・管理栄養士を目指すー」健帛社、2016.

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