「1か月児」及び「5歳児」健康診査支援事業について
〜こども家庭庁 成育局 母子保健課〜
令和6年度補正予算 10億円が本事業に追加され、健康診査の費用を助成することによって、出産後から就学前までの切れ目のない健康診査の実施体制を整備することを目的に乳幼児の新しい健診がスタートしています。
今までは母子保健法により市町村において「1歳6か月児」及び「3歳児」に対する健康診査の実施が義務付けられていましたが、これからどのように新事業が展開されるのでしょうか。
5歳児健診はどうなる?
実施方法:原則として集団健診
健診内容:発達障害など心身の異常の早期発見(精神発達の状況、言語発達の遅れ等)、育児上問題となる事項など必要に応じて、専門相談等が実施される流れになります。
留意事項
健康診査の実施に当たっては、各機関と連携を密に行うとともに、健康診査の結果等の情報の活用などにより伴走型相談支援の効果的な実施につなげること。
健康診査の実施が虐待の予防及び早期発見に資するものであることに留意し、こども家庭センターなどの関係機関とも連携しながら、必要な支援体制の整備を行うこと。
健康診査の実施に当たっては、健康診査の結果、発達障害等(発達障害等の疑いを含む。)と判定された幼児について、就学前までに必要な支援につなげること。
臨床心理士・公認心理師として園で過ごす子どもたちを観察するには・・・
なんと言っても年齢に応じた発達段階を理解した上で、集団場面ならではの観察事項を事前に予習しておきたいと思います。まずは4歳から5歳くらいの幼児の特徴について勉強しておきます。
4〜5歳の頃は、心身のコントロールができるようになり、社会性が身につく時期
生理的機能(4歳頃〜)
- 身長100〜108cm程度、体重15.5〜18kg前後
- 利き手が決まってくる
- 視力が1.0前後になり、涙腺の分泌が増し喜怒哀楽の新たな社会的感情を支える基盤となる
- においや味はより細かくわかるようになり、耳の聞こえは大人並みになる
手指の操作(4歳頃〜)
- 両手の機能分化が進む
- 手の交互開閉を自ら10回以上継続して確実に行える
- 人物画では胴体を表現する
- 手本通りに線を描こうとしてコントロールする
- 丸や四角などの簡単な図形を模写できる
- 時間をかけると、服のボタンを留められるようになる
全身運動(4歳頃〜)
- ケンケンでは5m先まで行って戻ってくることに挑戦するが、途中で足をついて調整したり、できるのは利き足のみだったりする
- 雑巾掛け、登り棒、走りながらの縄跳び、ボールを蹴ったり・・・「〜しながら・・・する」活動が可能になる
- 片足立ちが5〜10秒くらい出来始める
- ダンスや遊戯が少しずつ可能になってくる
言語・認識(4歳頃〜)
- 語彙数が1500〜2000語となる
- 新しい保育者や家族と不自由なく日常会話ができる
- 記憶力が高まり、好きな絵本などの文章を部分的に暗誦できる
- 友だちと会話しながら同じ場で遊んだりする
- 不安な時は「がんばれ」と言葉で自分を励ましたりする
- 「アホ」「うんち」「ババア」「くそー」などの汚い言葉を好んで使う
- 数の復唱「4739」などの4けたの数字を、2つずつの単位で記憶し再生する
- 数の理解は「10」まで可能になる
- その日の出来事、過去の出来事について接続詞を用いながら復文で話す
- 言葉が行動の自己調整機能を持ち始める
- 自分の状態と切り離して物事を一般化して考え、解決方法を考えられるようになってくる
- 「ボール」「机」などの言葉の意味を説明できるようになってくる
- 「それから」「それでね」など、接続詞を使いながら過去の出来事を話せるようになる
自我・社会性(4歳頃〜)
- 得意なことを発揮したり、他者のの要求や期待にこたえて褒められたり、うまくこたえられないとふざけたり、その時々の感情の起伏が激しい
- 「〜だけれども・・・する」という自制心の形成に向けた調整が始まる
- 他者と対立する場面でも「だって〜だから」と根拠を示して自己主張したり、「〜だけれども」と内面的調整をし始めたりする
- ネガティブな感情や葛藤を制御して、ポジティブな行動を実行するための内面的な調整が可能になる
- だんだんと「〜だけれども・・・する」という自制心が形成される
- 年下の子に、両手を持って一緒に跳びながら「ケンケン」を教えるといった導き方ができるようになる
- ルールを守るために、自分の願望を抑えようとし始める
- 友だちとぶつかり合った時に、自分の気持ちを言葉で説明したり、相手の言い分を聞こうとする姿勢が生まれてくる
- ジャンケンで順番を決めて友だちと遊べるようになる
- ルールを重視するために、守らない友だちを厳しく批判する
- 「恥ずかしい」という感情が育ち、「自分はこうなりたい」というイメージが心の中にでき始める
- 1日の生活におおよその見通しを持って行動できるようになってくる
4歳頃の保育のポイント
「〜しながら・・・する」運動遊び
曲に合わせて動いたり、綱渡りでバランスを取って遊んだり・・・
「片足を上げながら前に進む」といった別々にしかできなかった2つの動作を一つにまとめるような動作
はさみを使った製作 〜二次元可逆操作の獲得〜
紐を通す、結ぶ、ハサミで切るなどができるようになります
「ハサミで紙を切る」という一つの目的に2種類の動作を行うこと(二次元可逆操作)が可能に
簡単なルールのある集団遊び
遊ぶ前に一度、絵本の読み聞かせをして視覚的にイメージしてからスタートすると、遊びに入りやすくなる
しっぽ取りゲーム、かくれんぼ、椅子取りゲームなどに発展していきます
保育者がオニ役などのモデルを示すとよい
言葉への関心を高める 〜語彙のの急増〜
絵本や視聴覚教材を見たり聴いたりして、イメージを広げる
応答的な関わりとして有効なのは「なぞなぞ」などがある
回文、早口言葉、しりとり、言葉集めなども楽しめる
汚い言葉への対応
汚い言葉の表出は、相手に言葉を伝える喜びや意欲の表れもあり、言葉の発達の発展途上ともいえる
けれど大人が過剰に反応してしまうと、繰り返してしまいます
そのまま聞き流したり、公共の場など好ましくない状況では使ってはいけないことを伝えることも大事
小グループ活動
製作活動など、ひとりひとりの発想の広がりなどを丁寧に受け止める事も大切
まだまだ自分のことに一生懸命な時期ですが、少人数で活動する中で「友たちがやっているから自分もやってみよう」と刺激を受け、それが意欲につながっていきます
「〜だけれども・・・する」という気持ち 〜自制心の育ち〜
自分と相手の気持ちの両方がわかり始め、葛藤する時期です
思い通りにならない不満やつらさとの間で揺れ動きますが、大人に共感されたり、励まされたりする中で「わかっていてもできない」という気持ちに打ち勝つことができます(自制心が形成される)
けんかへの対応
友だちと過ごす喜びや楽しさを感じるようになりますが、同時に競争心も芽生え、ケンカが多くなる時期
子どもが大人に主張する姿は、自我の育ちであり成長の一つと言えます
自分気持ちがあるように、相手にも気持ちがあるということに気づけるように橋渡しをしていきます
いたわる気持ち
感情が豊かになり、身近な人の気持ちを察して、少しずつ自分の気持ちを抑えたり、我慢したりができるようになってきます
年下の子どもや赤ちゃんに興味を持ち始めます
おうちごっこやお母さんごっこが盛んに行われ、人形を赤ちゃんに見立ててお世話をするようになります
はしの持ち方の指導
手先が器用になりますが、個人差もあるので無理強いは禁物です
楽しく取り組めるように工夫し、一対一で丁寧に指導すると良い
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